2003年の後半に登場し、その異様な姿に驚かされた車両といえば、変態カバーこと3263Fです。
床下全体を防音カバーで覆うことで、車両の走行から生じる騒音を減らすことが目的でした。

この頃の小田急は、高架複々線化に伴う訴訟を抱えており、騒音問題に取り組んでいました。
そのような背景もあり3263Fが登場したわけですが、見かけ上のインパクトを強くすることによる、パフォーマンスの意味合いも少なからずあったように思います。

その3263Fですが、あれだけの重装備をしたこともあり、騒音削減効果は明らかでした。
通過時の静かさは圧倒的で、併結時にはそれがよく分かりました。

しかし、結局変態カバーが増えることはなく、たった1編成のみの装備で終わってしまいました。
なぜ増えなかったのでしょうか。

一つには、登場当初から言われてはいましたが、保守性の面で問題があったのだと思われます。
床下機器のメンテナンスをする際、このカバーは邪魔でしかなく、マイナス面が大きかったものと思われます。
その後、特急車の床下ではカバーが採用されていますが、防音のためというよりは、デザインとしての採用でしょう。

もう一つは、技術の発展により、防音カバー以外の方法で騒音対策ができるようになってきたことです。
それは全密閉式の主電動機の登場で、小田急では積極的に採用しています。

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3263Fが登場した当初は、これが今後増えていくという噂が流れており、小田急ファンとしては衝撃的でした。
結局増えることはなかったわけですが、当時の小田急が抱えていた事情が反映された、ある意味では象徴的な車両でした。