鉄道ファンに高い人気を誇り、惜しまれつつ2006年に引退した小田急9000形。
東京メトロ千代田線への直通用車両として登場しながらも、晩年は専ら小田急線内で使われました。

そんな9000形でしたが、鉄道ファンには人気がある一方で、社内では評判の悪い車両だったといわれています。
しかも、運転と保守の両現場から嫌われていたのです。

どうして嫌われていたのか、その理由として考えられるのは、地下鉄直通用のための重装備です。
9000形は、地下鉄線内で求められる高加減速性能を満たしつつ、小田急線内で求められる高速性能も持たせる必要がありました。
そして、地下鉄線内ではトンネル内の温度上昇を抑えるために回生制動が必要となる反面、小田急線内では安定したブレーキの性能を得るために発電制動が求められたのです。

このような経緯から、9000形には回生制動と発電制動が両方搭載されることになりました。
制動開始時の速度が75km/h以下の場合には回生制動を、それ以上の場合には発電制動が使われる仕組みです。

そのため、制動効果が複雑なものとなってしまい、運転の現場から嫌われたのです。
そんな車両が異形式と併結して走っていたわけですから、運転には相当な苦労があったののでしょう。

そして、このような重装備が原因で、保守の現場からも嫌われてしまいました。
電動車の比率も高かったため、負担も大きかったのだろうと思います。

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ここまで嫌われた理由ばかりを書いてきましたが、その特徴的な外見や人気があったことで、通勤型車両のイメージリーダーとしては重宝されていました。
小田急顔ばかりが走る当時、全く違うデザインの9000形は輝いていました。
駅で使われていたピクトグラム等は9000形がベースになっており、当時の人気の高さがうかがえます。

9000形の重装備は廃車の時期にも影響し、先輩である5000形よりも先に廃車されてしまいました。
しかし、盛大なさよならイベントが開催され、幸せな終わり方だったのかもしれません。