2020年8月限定で、小田急の全線を走行している赤い1000形。
通常は箱根登山線の小田原から箱根湯本の間を中心に走っており、都心部には馴染みがない車両です。

この赤い1000形が都心部に顔を出すようになった日から、小田急沿線は撮影者で溢れており、とても注目度が高いことが分かります。
鉄道ファンだけではなく、一般の利用客からもかなり注目されており、赤い1000形が来るとスマートフォンを向ける光景が見られます。
真っ赤な車両はかなり目立つため、利用客にもその違いが認識しやすく、一目でいつもとは違う車両が来たと分かります。

箱根登山電車の全線運転再開や、箱根の魅力をPRすることを目的とした今回の全線運行、PRの効果という面では大成功といえるでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大で観光需要が落ち込んでいますから、実際の集客力という点ではそこまでではないのかもしれませんが、赤い1000形を通して箱根という観光地を認知させられたのは間違いありません。

近年の小田急は車両の装飾に消極的で、他社の多くが積極的に行う中、装飾したとしても比較的地味なものが中心となっており、運行期間も短いものが多いのが実情です。
その小田急が、赤い1000形を全線で運転するというのを知った時には、驚いたというのが正直なところです。

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お隣りの京王は、高尾山やサンリオのキャラクターでラッピングした車両を走らせていますし、東急、西武、京急、東武と、多くの会社で定常的に特殊装飾の車両を運行しています。
小田急は近年のこういった流れに乗らない会社でした。

その理由は定かではありませんが、費用対効果を疑問視しているのかもしれませんし、鉄道ファンが集まることを嫌がっているのかもしれません。
そして、小田急としてはロマンスカーという存在に絶対の自信を持っているでしょうから、それで十分だと考えている可能性もあります。

ロマンスカーを日常で利用する機会は増えましたが、それでも利用する層は限られるでしょう。
そして、毎日乗るわけではないロマンスカーはどうしても非日常であり、そこから箱根という観光地を意識するのは難しいような気がします。
今回の取り組みは、日常で箱根を意識させる機会を創出したという点で、今までとは異なる層を開拓できる可能性があるように思います。

小田急はPRが下手だなと思うのは、今回も期間限定という点です。
そこまで特別なコストがかかるわけではないので、もう少し長く走らせ、定常的なPRをすれば良いのにと思います。
あまりにも長期になれば飽きられてしまいますが、もうすこし長くても良いのではないでしょうか。
10両で赤い編成を新たに用意し、定常的に走らせるぐらいのことをしても損はない気もします。

期間限定にすることで、撮影者が集中してトラブルも発生しています。
撮影者のモラルも問題ですが、トラブルが起きやすい環境を自ら用意している側面もあり、ある程度定常的なものとしたほうが総合的に考えても良いように感じています。

今回の成功を前向きに捉えて、小田急がPRの上手な会社になっていくことを願っています。
全線を走る赤い1000形は、暗い気持ちになりやすい現在の状況にあって、確実に明るい話題を提供してくれていますからね。