2021年3月13日のダイヤ改正に合わせて、車内販売が終了することを発表した小田急。
近年は車内販売を終了する動きが各社で相次いでいますが、残念ながら小田急も同じ道を歩むこととなりました。

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車内販売の終了によって、今後小田急ロマンスカーの価値はどう変わっていくのでしょうか。

走る喫茶室からワゴンサービスへ

ロマンスカーの車内販売は、1949年に始まった走る喫茶室が起源となっています。
走る喫茶室は、飲料や軽食を座席まで届けてくれることが特徴で、喫茶店と同様のサービスを車内で受けることができました。

開始当初から採算性はあまり考えられておらず、日東紅茶が紅茶の普及や宣伝を目的として営業を担当し、後に森永エンゼルが加わりました。
走る喫茶室はロマンスカーの価値を高め、利用者に親しまれていました。

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しかし、ロマンスカーの日常利用が増加し、座席まで届けるという行為が難しくなってきたため、1995年に走る喫茶室は終了となりました。
その後はワゴンサービスが提供されるようになりましたが、2005年に運行を開始したVSEでシートサービスが復活するものの、2016年には再びワゴンサービスのみに統一され今日まで続いてきました。

変化する小田急ロマンスカーの価値

1996年にEXEが登場して以降、観光と日常利用の住み分けで、小田急は試行錯誤を繰り返しているように思います。
近年は再び日常利用を重視する方向性に傾きつつあるようにも思いますが、今回の車内販売の終了は、そう単純な問題でもなさそうです。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、小田急は収益面で苦しい状況となっています。
現在車内販売を行っている小田急レストランシステムも苦しい状況であり、今回の終了と無関係ではなさそうです。
車内販売は元々儲かる事業ではないでしょうから、この苦しい状況の中では続けることが困難なのでしょう。

現在のロマンスカーは、前面展望席を備えた車両が4編成まで減ったことから分かるとおり、観光利用向けの列車を残しつつも、日常利用を重視する方向であることは間違いありません。
結果として、新型コロナウイルスの感染拡大が決定打になったのかもしれませんが、以前から車内販売の終了は議論されていたのだと思います。

特急という種別を与えられているロマンスカーですが、速達性はそこまでないというのが実態です。
新宿から小田原までを乗り通せば、快速急行との所要時間の差がありますが、新宿から本厚木までの区間に絞ると、ほとんど差がありません。
つまり、日常利用の観点では、快適な車内環境で着席して利用できるという価値が大きいということになります。

車内販売の終了は、様々な状況があって仕方がないと思う反面、快適な車内環境という面ではマイナスとなってしまいます。
EXE以外のロマンスカーは、座席の面でも中途半端になっている印象があり、特別料金を払って乗ることの価値を提供すると考えた場合、今後この部分をどうしていくのかは気になるところです。
現状はある程度詰め込みを重視した設計となっていますが、急行や快速急行の本数が増加し、急行を上手く使えば座って乗ることも比較的しやすくなっており、以前よりロマンスカーの価値は低下していると考えられなくもありません。

時代の変化に合わせ、ロマンスカーのサービスが変わっていくことは当然のことといえます。
しかし、総合点としての価値が低下してしまうと、長期的な視点では確実にマイナスとなってしまうでしょう。
サービスが変わることで低下する価値を、その分どこで上げていくのか、車内販売の終了によって生じる影響を今後小田急がどうしていくのか、ファンとしてそこが気になっています。

おわりに

走る喫茶室から続いてきたロマンスカーの伝統が、また一つ消えようとしています。
時代の変化に合わせて、ロマンスカーの新しい価値がこれからも生まれることを期待したいと思います。