新百合ヶ丘から唐木田までを結び、多摩ニュータウンから都心部にアクセスする路線となっている小田急多摩線。
小田急では最も新しい路線であり、小田原線や江ノ島線とは雰囲気が異なっています。

どこかのんびりした雰囲気は現在も残っていますが、元々は将来的な高速運転を考慮して建設されており、意外なポテンシャルを秘めた路線でもあるのです。

高速運転を考慮して建設された多摩線

小田原線から多摩線に入ると、路線の雰囲気は一変します。
路線自体が新しいため、当たり前といえば当たり前ですが、その背景には多摩線が将来的な高速運転を考慮していたことが影響しています。

多摩線は丘陵地帯を走るため、本来であれば曲線や勾配が多い路線となってしまいますが、様々な工夫を行ってそれらを避けているのです。
高速で運転するため、多摩線では以下のような配慮がされています。

・曲線部の半径を大きくする
・勾配を25‰以下に抑える
・踏切がない
・ロングレールを採用
・複線型の隧道を採用

他にも細かい配慮が色々とありますが、目立つものとしてはこれぐらいでしょう。

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現在は変わってしまったようですが、以前は架線にも違いがありました。
トンネルの先を見ると、線路が長い直線となっていることも分かりますね。

実現していない多摩線の高速運転

高速運転が可能な多摩線ですが、現在も営業運転での最高速度は100km/hに抑えられています。
建設時には、将来的な急行の120km/hでの運転が考慮されていましたが、そのポテンシャルは活かされていません。

多摩線の開業前後に登場した5000形や9000形は、設計上の最高速度が120km/hとされており、車両面でも考慮していたことがうかがえます。
しかし、今日まで120km/hでの運転は行われず、立派な設備はあまり活かされていないのです。
栗平駅に待避線の計画があったのも、高速運転を行う際の追い抜きを考慮していたのでしょう。



多摩線が高速運転を行わなかったのは、結果的にその必要がなかった、これに尽きるといえます。
当初想定していた路線の延伸は行われず、唐木田を終点として長い年月が経過しました。
優等列車の停車駅も多い状態となっており、高速運転をする理由もなければ、あえて通過駅を増やすほどの乗降客数の差もないのが現状です。

現在の状況が続く限りは、多摩線で120km/hの運転が行われることはないでしょう。
路線が延伸されれば可能性があるかもしれませんが、現在の計画に小田急は意欲的ではなさそうですから、実現は難しいかもしれませんね。

おわりに

急行で120km/hでの運転が計画されていた小田急の多摩線。
既に完全な夢物語となりつつありますが、京急のようなスピードで走る小田急の車両を見てみたかった気もします。