多摩線が分岐する駅として、各駅停車から特急までの多くの列車が停車する小田急の新百合ヶ丘。
待避線がある小田原線のホームが、多摩線用のホームを挟む構造となっていますが、近年はラッシュ時を中心に、多摩線用のホームを発着する小田原線の列車も設定されています。

機能的な構造となっている新百合ヶ丘ですが、列車の折り返しという面では課題を抱えており、ダイヤが乱れた際には苦労をしていることがうかがえます。

折り返し運転がしにくい新百合ヶ丘駅の構造

小田原線と多摩線を効率的に運転できる構造となっている新百合ヶ丘ですが、折り返し運転がしにくいという点で、少々課題を抱えています。
多摩線の列車は問題なく折り返し運転をすることができますが、小田原線の列車が行うのは簡単ではありません。

まずは下り列車ですが、小田原線のホームに入線した場合、そこから折り返すことができません。
折り返して上り線に入ることができないため、駅を出て先に進む必要があるのです。
下り列車が折り返す場合、基本的には一度多摩線のホームに入線する必要がありますが、多摩線の列車が発着する状況では制限が多くなります。

上り列車についても同様で、小田原線のホームに入ってしまうと、小田原方面に折り返すことはできません。
5番ホームに入れば多摩線には折り返すことができますが、これが活用できるシーンは多くないといえます。
小田原方面に折り返す場合は少々ややこしく、多摩線の4番ホームに入った後に引き上げ線へと入り、3番ホームを経由して小田原線へと出ていく必要があります。

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このような構造上の問題から、多摩線以外での折り返し列車を大量に設定することは困難であり、向ヶ丘遊園や相模大野とは対照的です。
多摩線の関係で列車の運行本数が変化する駅でもあるため、運用上は折り返し列車が設定できると良いのでしょうが、現状では難しいといえます。

ダイヤが乱れた際の変則的な使われ方

折り返しがしにくい新百合ヶ丘ですが、ダイヤが乱れた際には折り返し運転をする必要が生じる場合があります。
新百合ヶ丘から小田原方が運転見合わせとなった場合には、多摩線に列車を向かわせることも可能ですが、新宿方に行けない場合には困ったことになってしまうのです。

そこで見られるのが、小田原線と多摩線のホームを入れ替えて発着する光景です。
多摩線の列車は小田原線のホームからも折り返せるため、それぞれの路線が逆のホームを使用することで折り返し運転を行います。
ややこしい折り返し運転とはなってしまいますが、このような方法で問題点を一時的に回避しているのです。

新百合ヶ丘が折り返しをしにくいことで、小田原線の新百合ヶ丘行きは設定しにくいものとなっています。
折り返す列車が設定できれば、東京メトロ千代田線との直通列車を各駅停車や準急として多摩線に直通させ、小田原方面には折り返しの列車を設定するといったようなことも可能になりそうですが、現状ではそういった対応ができません。
江ノ島線に直通する列車に乗っている小田原方面に向かう乗客を、始発の列車でカバーする相模大野のようなことができないため、どうしてもダイヤ上の制約が多くなってしまっている印象です。

おわりに

最適解を簡単に導き出すことはできませんが、折り返しという点では使いにくい面もある新百合ヶ丘。
今後もこのままの構造が維持されるのか、将来予定されている大規模改良工事も含めて気になるところです。