沿線の開発が進んだことで、新宿から小田原までの長い距離を結んでいながら、小田急線の車窓は住宅ばかりが見られるようになりました。
昔はのんびりとした風景の区間も沢山ありましたが、現在は田畑も含めて限られた区間にのみ残っている状況となっています。

そのような状況の中で、まとまった自然を小田急で体験できるのが、渋沢から新松田までの区間です。

小田急で最も自然が豊かな6.2kmの区間

小田原が近くなるほど、少しずつ駅間の距離が長くなる小田急において、最長の距離を誇るのが渋沢から新松田の区間です。
その距離は6.2kmもあり、これは新宿から梅ヶ丘までの距離に匹敵します。

そして、距離だけではなく、ここは小田急で最も自然が豊かな区間でもあるのです。
車窓からは山々に生い茂る緑が見えるほか、線路と並行して流れる四十八瀬川を、電車は何度も鉄橋で渡りながら走ります。

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区間内にはトンネルが2ヶ所あり、地下を除けば小田急最長のものと、最短のものが両方含まれています。
自然の中を走るため、線路は右へ左へと頻繁にカーブを繰り返しており、他の区間では体験できない山岳路線のような雰囲気です。

このような区間を頻繁に10両編成の列車が通過していることが、現在の小田急を象徴しているともいえるでしょう。
地形的な問題もあるため、今後もある程度自然が残ったままとなりそうな、小田急にとっては貴重な区間でもあります。

乗車して楽しい渋沢から新松田までの区間

鉄道の写真を撮る人にとっては、自然と小田急を絡められる貴重な区間となっていますが、乗車するのも楽しいのがこの区間の魅力でもあります。
渋沢から新松田にかけては長い下り勾配となっていますが、逆から走れば上り勾配となっているため、行きと帰りで全く違う走りを見せてくれるのも面白い点です。
小田原に向かう際は、ブレーキをかけながらスピードが出すぎないように調節しつつ電車は走行し、新宿に向かう際は急勾配を力強く電車が上ります。

急勾配と急カーブが続くことに加えて、小田急では数少なくなった定尺レールが使われていることもこの区間の特徴です。
小刻みに奏でられるジョイント音はどこか懐かしく、都心部では決して味わうことができません。
四十八瀬川が並行しているため、鉄橋の数もかなり多くなっており、賑やかな走行音に揺られながら車窓の自然を眺めるのも楽しいものです。

そして、車窓の景色は季節によっても変化します。
このような変化を楽しむことができるだけではなく、気象条件が良ければ富士山も見えることがあり、何度乗車しても違った発見があるのも魅力的です。

おわりに

他の小田急の区間では味わうことができないものが、豊富に詰まっている渋沢から新松田までの区間。
小田原や箱根湯本に遊びに行くついでに、乗車を楽しんでみてはいかがでしょうか。