少しずつではあるものの、徐々にホームドアが設置された駅が増えてきた小田急線。
運用している車両の都合で一気には進められない事情がありましたが、それらが解消しつつあることで、徐々に設置のペースが加速しそうな状況となってきました。

今後小田急ではどのようにホームドアが整備されていく予定なのか、最新の状況を整理してみたいと思います。

小田急でホームドアの整備が進まなかった背景

小田急で最初にホームドアが設置されたのは新宿駅で、2012年のことでした。
快速急行や急行が発着する4番ホームと5番ホームに設置されたもので、国や自治体の補助を活用して導入されました。
この時点では限定的な導入であり、本格的な導入に向けた検討を進めるための、試験的な要素が強いものでした。

ホームドアが設置されたことで、扉の位置が合わない1000形のワイドドア車のような車両には、この時点で運用上の制限が発生しました。
小田急にはロマンスカーのように規格から外れる車両も多く在籍しており、本格的に導入するためにはこれらの車両を整理する必要があったのです。

そして、ホームドアを設置することで、車両を駅に停止させる際の位置に精度が求められるようになることも、小田急が導入を一気に進められなかった理由です。
車両が駅に停車した際、ホームと車両のドアの位置がずれていると、ドアを開けることができません。
ホームドアがなければ問題がなかったずれでも停止位置を直す必要が生じるため、列車の遅延にも直結してしまうのです。

そこで、定位置停止装置(TASC)を導入し、車両が駅に停車する際の停止位置の精度を高めることが一般的で、小田急でも導入が進められています。
この装置自体の導入に時間が必要だったことに加えて、導入の相性が悪い電磁直通ブレーキを使用した車両が多数在籍していたことも、小田急で本格的に導入が進められなかった理由でした。

現在の設置状況と今後の計画

車両面での課題はあるものの、車両の運用を工夫することや、運転士の腕に頼ることで、一部の駅に対してホームドアの設置が進められてきました。
現在までに設置が済んだ駅は以下のとおりです。

・新宿(4・5番ホーム)
・代々木八幡
・代々木上原
・東北沢
・下北沢
・世田谷代田
・梅ヶ丘
・登戸

このように、都心部の駅が中心となっており、複々線化と絡めることで設置がしやすかったことも背景にありそうです。
優先度が高い乗降客が多い駅や、ホームが狭い駅よりも先に設置されたのは、現実的に設置が可能な駅を優先したということなのでしょう。

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そんな状況の中、小田急では2019年度から5000形を増備することで、ホームドアの導入に支障がある車両の置き換えを進めてきました。
小田急において、ホームドアの導入に支障があるとみられる車両は以下のとおりです。

・8000形(界磁チョッパ制御車)
・1000形(未更新車)
・1000形(ワイドドア車)
・7000形
・50000形

このように、ここ数年で廃車となった車両が多く含まれており、それらの整理を進めてきたことが分かります。
ロマンスカーを除いた通勤型車両の整理はあと一歩のところまできていることから、2022年度からはホームドアの設置が本格化することが予想されます。

現時点において、今後ホームドアを設置することが発表されている駅は、以下のとおりとなっています。

・新宿(8・9番ホーム)
・町田
・相模大野
・海老名
・本厚木
・中央林間
・大和

既に設置の準備工事が始まっている駅があり、新宿は2021年度内に設置が完了する予定です。
その他の駅は2022年度以降とされていますが、比較的早いペースで設置が進められるのではないでしょうか。
小田急は1日の利用者数が10万人以上の駅を優先すると発表しており、この条件に該当する新百合ヶ丘と藤沢についても、時期は未定ながら設置が検討されています。

現時点で発表されている情報は以上ですが、車両面の整理が進んだことで、ホームの補強等が必要といったハードルはあるものの、設置はしやすくなりつつあります。
計画が発表されていない駅についても、今後具体的な計画が発表され、設置が進められていく可能性が高いといえそうです。

おわりに

ホームでの安全を確保する切り札ともいえるホームドア。
導入に向けた前提条件が小田急では整いつつあり、今後設置が加速する可能性が高くなってきました。