鉄道においては、線路の継ぎ目を通過する際にガタンゴトンというジョイント音が聞こえますが、ロングレール化が進んだ小田急ではほとんど聞くことができなくなりました。
そんな小田急の線路沿いで、ジョイント音とは少し異なる「チリンチリン」という音が聞こえる場所があります。

意外と聞く機会が多いようにも感じるこの音、正体は何なのでしょうか。

線路沿いで聞こえる謎の音

小田急の線路沿いを歩いていると、「チリンチリン」という音が聞こえてくる場所があります。
列車が通過するとその音が鳴り、ジョイント音のようなリズムではあるものの、ジョイント音とは異なります。

この音は小田急だけでしか聞けないものではなく、他の路線でも聞くことができますが、小田急では比較的多くの場所で耳にするかもしれません。
ジョイント音と同じリズムを奏でることから、線路と車輪に起因する音であることは、だいたいの方が想像できるのではないでしょうか。

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その音の正体は、この写真の右下に小さく写り込んでいます。
これはレール塗油器という機械であり、車両が通過する際に自動で潤滑油を噴出するもので、一般的にはアラジンと呼ばれています。
なぜこのような名前となったのか、由来を調べてみてもはっきりとは分からないのですが、魔法のランプが関係しているのでしょうか。

レール塗油器(アラジン)の役目

2本の線路の上を、フランジが付いた車輪で走行するのが鉄道ですが、その構造上摩擦が生じることが避けられません。
直線区間ではそこまで大きな問題にはならないものの、曲線ではどうしても摩擦が大きくなってしまい、金属が擦れる音はそれによって発生しています。

曲線部で摩擦が大きくなるのは内輪差に起因しており、外側のレールのほうが若干長いことに対して、鉄道では車輪の形状を工夫することで通過を可能にしています。
ここでは多くを説明はしませんが、その際に外側の車輪のフランジがレールに接触するため、金属が擦れる摩擦音が発生するのです。
摩擦が生じるということは、レールや車輪の摩耗が進むほか、脱線に繋がる恐れもあるため、擦れる部分に油を塗る対応を行っています。

油を塗るといっても、ただ塗ればよいというわけでもないのが難しい部分で、余計な箇所に油がついてしまうとスリップを発生させてしまいます。
つまり、摩擦が生じる部分にだけ適量の油を塗る必要があり、これを効率的に行っているのがアラジンということになります。

アラジンはタンク内に潤滑油を入れておき、それをホースでレールの内側に導いています。
通過する際に車両がピストンを踏み、それによって油が適量噴出されるようになっており、「チリンチリン」という音はその際に発生しているのです。

おわりに

車両が通過する際に、独特な音を発生させているアラジン。
地味な役割ではありますが、安全で快適な輸送を支える機械として、なくてはならないものとなっています。