新宿から小田原まで、スーパーはこね号が最速59分で走破している小田急のロマンスカー。
3月12日のダイヤ変更後も最速列車は維持されますが、午前9時に新宿を出発するスーパーはこね1号の1本のみとなります。

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ロマンスカーといえば、3000形(SE)が新宿から小田原までを60分で結ぶことを目指したように、高速走行を行うイメージもありますが、実際には運転する際の最高速度を110km/hまでに抑えています。
120km/h以上での運転を行う路線もある中、なぜロマンスカーはそれを行わないのでしょうか。

110km/hを最高運転速度としているロマンスカー

小田急のロマンスカーといえば、新宿から小田原までをノンストップで走り、箱根に多くの観光客を運んでいる、それは少しずつ昔のこととなりつつあります。
今でもそのような列車がないわけではなく、土休日に運転されるスーパーはこね号がその役目を担っており、新宿から小田原までを59分という短時間で結んでいます。

59分で走破するということは、それなりのスピードで走っていると思ってしまいますが、ロマンスカーの最高運転速度は110km/hであり、昔から変わっていません。
快速急行等の最高運転速度は100km/hですから、それよりは速いものの、全国的には120km/hや130km/hで走る特急も多く、それに比べると速くはないことが分かります。

しかし、車両自体が110km/hまでしか出せないわけではなく、現在活躍している車両は設計最高速度が120km/hで、50000形(VSE)のみは130km/hとなっています。
最高運転速度を引き上げるのは簡単ではないものの、頑張れば実現できなくはない車両が揃っている状態とはいえそうです。

なぜロマンスカーは120km/hでの高速運転を行わないのか

複々線化によって踏切が減少し、都心部での高速運転ができそうなロマンスカーですが、なぜ行わないのでしょうか。
その理由を一言にまとめるとしたら、120km/hで走るメリットがない、これに尽きるといえます。

ロマンスカーが速く走れないのは、最高速度ではなく列車の密度が高いことが根本的な理由となっており、仮に最高運転速度を引き上げたとしても、先行列車に追いつきやすくなってしまうだけで、速達性の向上にはほぼ繋がりません。
新宿から小田原を59分で走破する列車については、先行列車の待避等で相当な工夫がされており、他の列車を犠牲にすることで成り立っている状況です。

そもそも小田急にはカーブが多い区間も多く、110km/hを出せる区間も限られています。
仮に一部の区間で120km/hの運転をしたとしても、それによる時短効果はほとんどありません。
どちらかといえば、ロマンスカー以外の車両の加減速性能を向上させ、道を譲りやすくしてもらうほうがよく、これは近年地道に進められてきました。

小田急は安全を重視しており、都心部においては騒音に絡む苦い記憶もあります。
これらの点からも、無理に120km/hでの運転を行う必要は、小田急の場合ないといえそうです。

運転が始まった頃とは、ロマンスカーの立ち位置も随分と変わっており、日常利用がかなり増えています。
速達性よりも着席保障や快適性が求められているのが実情であり、今後も最高運転速度が引き上げられる可能性は低いといえそうです。

おわりに

ロマンスカーが120km/hで走り去る姿を見てみたいとは思うものの、それを行うメリットはほとんどありません。
列車の密度が下がれば多少メリットが生まれそうですが、そうなる状況は小田急にとって嬉しいものではないのでしょうね。