小田急小田原線の起点である新宿から一駅、都心部にあるとは思えない静けさが漂う南新宿駅。
駅に降り立つと、隣の駅が新宿であるということが信じられないような、のんびりとした雰囲気です。

20220430_03

今回の記事では、南新宿の歴史を簡単に振り返りつつ、その不思議な魅力を見てみたいと思います。

南新宿駅の歴史

小田急の南新宿は、小田原線が開業する1927年4月1日に設置されました。
目立たない駅ではあるものの、その歴史はやや複雑な経緯を辿っており、駅名の変更や移転が過去に行われています。

南新宿の歴史を時系列で簡単にまとめると、以下のとおりとなります。

1927年4月1日:千駄ヶ谷新田駅として開業
1937年7月1日:駅名を小田急本社前に改称
1942年5月1日:現在の駅名である南新宿に改称
1973年12月21日:新宿駅の改良工事に合わせて現在地に移転
1988年3月22日:8両編成の各駅停車が停車を開始
2019年3月16日:10両編成の各駅停車が停車を開始

開業時から存在する歴史の長い駅ですが、最初の駅名は千駄ヶ谷新田であり、現在の駅名とは異なっていました。
JR東日本には現在も千駄ケ谷駅がありますが、似たような名称の駅が小田急にも存在していたことになります。

駅名の変更や移転の経緯については、過去に詳しくまとめた記事がありますので、そちらも合わせてご覧下さい。



こうして現在地で10両編成の停車にも対応した駅となりましたが、利用者はお世辞にも多いとはいえず、都心部にありながらも独特な魅力がある駅となっています。

南新宿の不思議な魅力

今回の記事で書きたかったのは、この南新宿が持つ不思議な魅力についてです。
普段から利用する方でなければ、南新宿で降りる機会はほとんどないというのが実際のところだと思いますが、先日たまたま利用する機会があり、改めてその不思議な魅力に気付かされました。

南新宿がのんびりしていると感じる理由には、利用者が少ないという事情が関係しています。
どのぐらい少ないのかというと、全70駅がある小田急の中で70位、つまり最下位なのです。
2020年度の1日平均駅別乗降人員では3,153人となっており、隣の新宿が317,845人であることと比較した場合、僅かに1%程度となっています。
足柄と小田原の関係にも似ていますが、足柄の場合は小田原の8%程度の利用者はいるため、南新宿の利用者が突出して少ないことが分かります。

そんな南新宿ですが、ホームに降りてみると分かるとおり、上下のホームを行き来するための跨線橋がありません。
上屋があるのでそこまでではないですが、跨線橋や橋上駅舎がないことで比較的空が見えており、背景には新宿の高層ビル群も見えるため、そのアンバランスな印象がまた面白いのです。

さて、肝心の駅舎はどこにあるのかというと、ホームの中央付近にある階段を降りた先、高架下に設けられています。
数台の自動改札機が設置されている改札口は、線路の下を通る道路へと繋がっています。
ホームの下には4本もの道路が通っていますが、線路と並行する道路が存在しないため、初めてだと改札口を探してさまよってしまうかもしれません。

南新宿の近くにはJR東日本と都営地下鉄の代々木駅がありますが、ここで乗り換えをする人はほとんどいないでしょう。
新宿で乗り換えるよりも楽なケースがあると思われますが、それを計算して利用するのはなかなかハードルが高そうです。
駅の周辺には意外と住宅が多いものの、近くに代々木駅があることで、南新宿の利用者はどうしても少なくなってしまうのでしょうね。

おわりに

駅を移転した経緯からか、現在地はどこか強引にホームが設置されているような印象もあり、それが独特な雰囲気を生み出しているのかもしれません。
新宿まで歩くこともできるため、ちょっとした散歩のつもりで降りてみてはいかがでしょうか。