小田急の起点である新宿から二駅目に位置し、明治神宮への最寄駅ともなっている参宮橋。
各駅停車のみが停車する静かな駅ですが、初詣の時期には参拝客で賑わい、普段とは少し違った様子を見せてくれます。

参宮橋の駅名は、駅の近くにある同名の橋に由来するとされていますが、橋の特徴や時系列を整理すると、少々謎めいた部分もあるようです。

代々木練兵場の脇を通った小田急線

小田急の参宮橋駅は、小田原線が開業した1927年4月1日に設置されました。
当初から駅名は参宮橋で、現在までに変更は一度も行われていません。

駅からは明治神宮の西参道が近いものの、駅自体がそれほど混まないため、参拝に訪れる際は穴場の駅ともなっています。
大晦日の夜には、初詣客のためにロマンスカーが停車することが恒例となっており、ニューイヤーエクスプレスが停車する姿を見ることができます。

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現在は明治神宮のイメージが強い参宮橋駅ですが、開業当時は代々木八幡駅にかけて代々木練兵場があり、周辺には陸軍の施設が広がっていました。
参宮橋駅はその脇を通っており、陸軍省所轄地と刻まれた杭が現在も残っています。

かつての駅舎は神社風の外観をしており、後の改築によってその姿は失われてしまいましたが、2020年に駅の改良工事が完了し、現在は木材を多く使ったあたたかみのある駅となっています。

駅名の由来に潜む謎

参宮橋駅の新宿寄り、ホームの終端部付近には、駅名と同名称の参宮橋が架かっています。
小田急の線路を跨ぐ道路橋で、自動車も通る大きな橋です。

様々な文献に目を通すと、駅名はこの橋に由来するとされているのですが、気になる点があります。
それはこの橋が小田急を跨ぐ橋であることから、線路を敷設する際に架けられたと考えた場合、時系列が少々おかしくなるというものです。
同じことを考える方はいらっしゃるようで、調べると色々な情報が出てきました。

そんな参宮橋が架けられたのがいつなのかを調べると、どうやら1926年のことのようですが、確定的な情報は得られませんでした。
小田急の開業が1927年ですから、仮に事実であればその前年ということになります。
橋の歴史が浅すぎるようにも感じますが、そもそも明治神宮が創建されたのが大正時代ですから、小田急の開業までに長い歴史を持つ橋とはならないともいえます。

いずれにしても、明治神宮の創建と小田急の開業時期を考慮すると、何十年もの歴史を持つ橋ではないことだけは確かですから、小田急の開業にあたって橋を建設して参宮橋と命名、駅はその名称をもらったというシンプルな結論が、最も可能性としては高そうです。

おわりに

駅名も明治神宮に関連している参宮橋ですが、最寄駅であるというのは意外と知られていないようにも思います。
代々木上原から東京メトロの千代田線で明治神宮前駅に行けることもあり、そちらのイメージが強くなるのかもしれませんね。