1000形のリニューアルが途中で中止となり、現在は3000形のリニューアルが行われている小田急。
近年の小田急では、新車に近付けるような徹底的なリニューアルが行われてきましたが、3000形ではそういった方針にも変化が見られるようです。

従来の車両に対して徹底的なリニューアルを行う方針が変化し、5000形の新造が行われるようになった背景を考えてみたいと思います。

徹底的に行われるようになったリニューアル

小田急では、車両の登場から20年前後が経過した時期になると、車体修理と呼ばれる大規模な修繕が行われてきました。
通勤型車両においては、2600形から内装にも手が加えられる部分が増加し始め、5000形や9000形では内装のイメージを変更するような内容へと変化していくこととなります。

修繕内容が多岐に渡るようになる中、いつしか対外的にはリニューアルという表現が用いられるようになり、更新後の車両は当時の新車に近い水準へと一新されていきます。
そして、車体と内装にほぼ限られていたリニューアルは、8000形の3本目から足回りも含めたさらに大規模なものへと変化し、当時の新車である3000形に合わせられるようになりました。

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8000形で最大規模となったリニューアルは、1000形においても方針が継続され、車体の基本的な部分以外は全て一新されているような、そんな仕上がりとなっています。
登場から25年程度が経過してからのリニューアルであり、いつまで使うのかという点も気になるところですが、サービスの向上と長寿命化を狙った方向性だったといえるでしょう。

リニューアルの中止で新造へ

徹底的なリニューアルにより、順次新車同然の姿へと生まれ変わりつつあった1000形ですが、2020年度に異変が生じます。
5000形の増備により車両に余剰が生まれる中、元々リニューアルの対象外だったワイドドア車ではなく、ノーマルドアの1000形に廃車が発生したのです。
ワイドドア車以外の全車がリニューアル予定とされていた1000形でしたが、この廃車によって計画変更が発生したことが明るみになりました。

リニューアルの計画が変更となった理由は明らかにされていませんが、長期化する工期や、ホームドアの導入が影響した可能性が高いとみられます。
車両の世代交代や8000形のリニューアルが済んだ結果、TASCとの相性が悪い電磁直通ブレーキはほぼ1000形のみの装備となり、ホームドアを本格的に導入していく際の障壁となりつつありました。

しかし、1000形のリニューアルが中止となった理由は、それだけではないとも考えられます。
2000形や3000形の初期車を飛ばして、現在は3000形の3次車以降にリニューアルが行われており、その内容が以前よりも簡素化されているとみられることからも、その背景が見えてきます。
今後もリニューアル自体は行うものの、全ての車両を対象にするのではなく、必要な車両に対して、必要な内容のみに絞って行っていくという方針が、現在の状況からは分かります。

方針が変更となった理由には、コストの問題が関係していると考えられます。
きちんとしたメンテナンスを行うことで、昔の車両は古い機器を長く使い続けることが可能でしたが、近年の車両はハイテク化が進み、古くなると保守用部品の確保に苦労するようになりました。
足回りの一新には、こういった状況を解消する狙いもありますが、その分コストの増大や後期の長期化を招いています。

そして、リニューアルでは対応しきれない部分もあります。
車体の構造自体は旧来のままであり、衝突時の安全性を高めるような対策は難しく、どうしても新型車に見劣りする部分が残ってしまうのです。
車両を新造したほうが結果的に低コストだという判断があり、1000形のリニューアルは中止になったと考えられるでしょう。

ステンレスの採用により車体が長寿命化する中、機器は長期での使用が難しくなったというのは、少々皮肉な展開でもありますね。

おわりに

車両の新造へと舵を切った小田急ですが、今後はどうなっていくのでしょうか。
利用動向が変化したことで、車両の置き換えをハイペースで進めることは難しくなり、エネルギーや資源価格の上昇が進む中、今後は車両を新造するコストが増大する可能性もあります。

状況の変化が激しい現代において、今後の車両計画はどうなっていくのでしょうか。
1000形の未更新車が消えようとする中、気になることがあまりにも多い状況となってきました。