2002年に営業を終了し、現在は駅名に施設の名称が残っている向ヶ丘遊園。
小田急系の遊園地として親しまれましたが、事業の継続は困難と判断され、惜しまれつつ閉園となりました。

向ヶ丘遊園は自然が豊富で、それ自体が特徴ともいえる遊園地でしたが、その園内には鉄道資料館という施設がありました。

向ヶ丘遊園内にあった鉄道資料館

規模はそこまで大きくないものの、向ヶ丘遊園内には鉄道資料館という施設がありました。
鉄道資料館自体への入場は無料で、入園者であれば誰でも入ることができる施設でした。

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鉄道資料館は1980年10月6日に完成した施設で、外観は向ヶ丘遊園の北口にある駅舎と似ています。
似ているのには理由があり、新松田の駅舎を建て替えるにあたり、旧駅舎を移設して誕生したという経緯があります。

新松田の旧駅舎は、ギャンブレル屋根の特徴的な建築物となっており、歴史的にも貴重なものとなっていました。
そこで、向ヶ丘遊園内に移設し、鉄道資料館として活用されることになったのです。

ギャンブレル屋根の駅舎は、小田急の開業時に主要駅で採用されたもので、向ヶ丘遊園、町田、本厚木、秦野、新松田の5駅で見ることができました。
現在も向ヶ丘遊園の駅舎として残っており、歴史的な価値を現在に伝えています。

鉄道資料館はどんな施設だったのか

ロマンスカーミュージアムの前身ともいえる鉄道資料館は、小田急の小さな博物館といったイメージでした。
施設の横には電気機関車のデキ1010形が展示されており、実物の鉄道車両に触れることもできました。

中に入ると、信号機や車輪等の実物が展示されており、小さな施設ながら充実した内容でした。
遊園地内という場所の特性上、幼い子供でも楽しめるようになっており、車両の説明パネル等もその点が配慮されています。

その他にも、ヘッドマーク、種別や行先の表示板、切符、標識、鉄道に関する道具等が所狭しと展示され、鉄道好きにはたまらない施設となっていました。
鉄道模型が走る大きなジオラマもあり、遊園地よりこちらを楽しみにしていた子供もいたかもしれません。

入園者に親しまれていた鉄道資料館でしたが、向ヶ丘遊園の閉園と運命を共にすることとなり、2002年3月31日をもって閉館となりました。
移設した駅舎、デキ1010形は解体されてしまい、残念ながら多くのものは現存していません。
展示物は保管されているものもあるようで、時折見られる機会があるようです。

おわりに

自然が豊富だった向ヶ丘遊園は、それこそ今の時代であれば差別化により生き残れたのかもしれません。
鉄道資料館は小さな施設でしたが、ロマンスカーミュージアムとは違った魅力があり、なくなってしまったことが残念でなりません。