鉄道車両でも当たり前の装備品となり、現代の日本では欠かすことができなくなってきた冷房。
1971年からは通勤型車両にも本格的な冷房車を導入し、小田急は1989年に冷房化率100%を達成しました。

20180811_03

家庭用と比較して、鉄道車両には高い能力の冷房が搭載されていますが、そのパワーはどのように変化してきたのでしょうか。

通勤型車両の冷房

小田急の通勤型車両で初めて冷房を搭載したのは、1968年に試験車両となった2400形で、クハ2478のみが冷房車へと改造されました。
その後、1971年に登場した5000形の3次車以降は基本的に冷房車とされ、従来車の一部も改造によって冷房車となりました。

通勤型車両はドアを開閉する機会が多いため、昔から強力な冷房が搭載されていますが、近年はさらに能力が高められています。
各形式における、1両あたりの冷房能力は以下のとおりです。

2400形:42,500kcal/h(49.43kW)
2600形:42,500kcal/h(49.43kW)
4000形:42,000kcal/h(48.85kW)
5000形:42,500kcal/h(49.43kW)
9000形:42,500kcal/h(49.43kW)
8000形:42,000kcal/h(48.85kW)
1000形:46,000kcal/h(53.50kW)
1000形(ワイドドア車):50,000kcal/h(58.15kW)
1000形(更新車):50,000kcal/h(58.15kW)
2000形:46,000kcal/h(53.50kW)
3000形(2次車前期型まで):42,000kcal/h(48.85kW)
3000形(2次車後期型から):50,000kcal/h(58.15kW)
4000形(2代目):50,000kcal/h(58.15kW)
5000形(2代目):50,000kcal/h(58.15kW)

結果はこのようになっており、1000形からやや強力なものへと変更され、近年は50,000kcal/hが標準となりました。
1000形のワイドドア車だけが、同時期の車両と比較して能力を高めていますが、ドアの開口幅が広いことに対応したためで、外に逃げる冷気が多い弱点をカバーしようとしています。

気になるのは3000形で、2次車の前期型までは能力が抑えられたものの、後期型からは一気に能力がアップしています。
それ以降は50,000kcal/hでの増備が続いており、現在の標準といえそうです。

ロマンスカーの冷房

ドアを開閉する頻度が低いロマンスカーは、通勤型車両と比較して冷房の能力が控えめとなっています。
各形式における、1両あたりの冷房能力は以下のとおりです。

3000形(原形):18,000kcal/h(20.93kW)
3000形(編成短縮改造後):24,000kcal/h(27.91kW)
3100形(原形):18,000kcal/h(20.93kW)
3100形(冷房増設後):28,500kcal/h(33.15kW)
7000形:31,500kcal/h(36.63kW)
10000形:32,000kcal/h(37.22kW)
20000形:36,000kcal/h(41.87kW)
30000形:34,500kcal/h(40.12kW)
50000形:23,000kcal/h(26.75kW)
60000形:40,000kcal/h(46.52kW)
70000形:40,000kcal/h(46.52kW)

ロマンスカーの場合は、展望席の有無や車両により能力に違いがあるため、代表的なものをピックアップしました。
近年になるほど能力が高くなるのは通勤型車両と同様ですが、50000形のようなケースもあります。

連接車は車体の長さが短いため、冷房能力が多少低めでも問題ないことになります。
現在の標準は40,000kcal/hのようで、今後はこの能力での製造が続きそうですね。

おわりに

少しずつ能力を高め、より強力なものが搭載されるようになってきた冷房装置。
近年は能力が固定化されつつあるようですが、今後変化することはあるのでしょうか。