現在はバケットシートが主流となり、時代に合わせて変化を続けている鉄道の座席。
小田急の通勤型車両においても、現在までに様々な座席が採用されており、変化をし続けながら今日に至っています。

色や形状、座り心地等、車両によって様々なタイプの座席が登場してきましたが、それぞれの座席には時代背景も反映されていました。

大量輸送時代を支えた座席

その後に登場する車両の基礎となり、小田急初の高性能車となった2200形では、深く座れる奥行きのある座席が採用されていました。
それ以前の車両についても同様のスタイルで、大量増備が行われる2400形もその流れを踏襲しています。
輸送需要が高まりつつありましたが、座席についてはまだ余裕を残していた頃でした。

座席に大きな変化が生じたのは、2400形に続いて登場した2600形で、奥行等をかなり狭くすることで床面積を拡大し、輸送力の最大化が図られました。
さすがにやりすぎたのか、増備車では奥行を広げる改良が行われていますが、2400形以前の車両よりは狭くなっています。

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奥行については9000形でさらに広げられ、座り心地の改善が進められていきます。
昔は小田急の座席といえば青が基本で、この色は8000形まで続きます。
しかし、8000形は最終増備の段階で車内を暖色系へと変更し、座席の色は赤系統へと変化しました。

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色については変化が生じたものの、空いている時は間隔を空けて座り、混雑時は詰めて座ることができる座席は変わらず、利用者のマナーに頼る時代でした。
2600形から続く座席の流れは、1000形で完成形に到達したといえそうです。

改良が続けられる座席

座席が再び大きく変化することになったのは、1000形のワイドドア車が登場した際のことでした。
複々線化以外の方法で輸送力を増強する余地がなくなりつつあり、ワイドドア車ではついに座席を収納する機能が採用されますが、結果的に営業運転で使用されることはありませんでした。

そして、現在に繋がる大きな変化が2000形で発生します。
2000形では小田急で初めてバケットシートが採用され、着席する位置が明確化されるようになりました。
空いている時にも隣接して座らなければいけないケースが発生しますが、利用者のマナーに頼るだけではなく、仕組みで解決するようになってきたのはこの頃なのかもしれません。
従来車についてもバケットシートへの交換が行われ、5000形以降の車両に波及していきました。

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バケットシートであることは変わらないものの、3000形では違った変化が生じます。
リサイクル性の向上を図るため、座席の材質を変更したことで座り心地が硬くなりますが、利用者からの評判はいまひとつでした。
4000形や3000形の増備車では改良が行われますが、座る時のことだけを考えての設計ができない時代となりつつありました。

最新の5000形では、これまでの反省点を活かして改良したと思えるような座席が採用され、座り心地はかなり改善されています。
配色についても多様化が進み、最近は内装に合わせた個性的なものが採用されるようになりました。
制限が多い中でも、知恵を絞ることで改良を進めていく、そんな時代になったのかもしれませんね。

おわりに

時代に合わせて変化し、よくなったり悪くなったりしてきた小田急の座席。
昔のどこにでも座れる座席を懐かしく思う一方で、5000形には座席の進化を感じ、登場した時には嬉しく思いました。