はるひ野駅が2004年12月11日に開業して以降、新駅の設置が行われていなかった小田急線。
まだ公式発表ではないものの、神奈川県伊勢原市内に新駅の設置を検討しているとの報道がありました。

報道によると、新駅の設置に合わせて大野総合車両所の移転も検討されているようですが、仮に実現へと向かう場合、小田急はどのようなことを狙っていると考えられるのでしょうか。

伊勢原市内に新駅の設置が検討されているとの報道

2023年2月24日のことですが、伊勢原市内に小田急が新駅の設置を検討していると、NHKが報道しました。
設置が検討されているのは伊勢原と鶴巻温泉の間とのことで、駅間距離としては3.7kmの区間です。

具体的な位置は発表されていませんが、鶴巻温泉寄りの農地が広がるエリアが検討対象のようで、小田急沿線では少なくなった田園風景が広がっています。
報道が事実である場合には、既に水面下で地権者との接触は行われているのでしょう。

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新駅の設置が想定される区間内で20年近く前に撮った写真ですが、この頃と風景は大きく変わっておらず、小田急沿線の中では変化が少ないエリアでした。
さらに、報道では新駅の設置だけではなく、相模大野にある大野総合車両所の移転も検討されているとのことです。
実際には新駅の設置と工場の移転がセットなのでしょうが、昔から伊勢原市内に車両基地を設ける計画があったといわれており、場所を変えつつも実現に向けて大きく前進しているということなのでしょう。

NHKの報道を受けて、鉄道プレスさん、阪和線の沿線からさん、Stella Rail Sideさんでも記事が書かれておりますので、よろしければご覧下さい。







報道によると、2023年3月8日に小田急と伊勢原市が連携協定を結ぶとのことですので、正式発表はそのタイミングとなるのでしょうか。
いずれにしても、決定に近い検討ということなのでしょうから、田園風景がなくなる寂しさはありつつも、小田急ファンとしては楽しみが一つ増えたといえそうです。

小田急が新駅と工場の設置を検討する狙い

久し振りの新駅という点が注目されますが、報道に細かく目を通すとあることに気付きます。
さらりと触れられている大野総合車両所の移転については、新駅の建設に先駆けてとされているのです。
つまり、工場の移転先を確保するという目的が先にあり、それに付随して新駅の設置が検討され始めたと考えるのが自然ということになります。

大野総合車両所は、経堂工場と相武台工場を移管して1962年10月19日に開設され、当初は大野工場と呼ばれていました。
現在も車両を整備する中枢として日々操業していますが、開設から既に60年以上が経過し、建物や設備の老朽化も進んでいるとみられます。
建て替えの検討等を行うべきタイミングといえそうですが、同じ場所で操業を続けつつ建て替えることは容易ではなく、移転という選択肢になったものと思われます。

大野総合車両所が建設された当時とは、車両の事情が大きく異なるのも背景にあると考えられます。
建設された当時、通勤型車両に8両や10両の固定編成は存在しませんでしたが、現在はそれらのほうが主流になりつつあります。
しかし、大野総合車両所はそれらの長編成に設備が対応できておらず、編成を4両や6両に分割する必要が生じており、やや都合が悪い状況となっているのです。
移転によって長編成を分割せずに対応できるようになれば、効率の面でもメリットがあるといえるでしょう。

工場ができるとなれば、隣接する駅は入出庫にも対応できると考えるのが自然ですが、ここにも何らかの狙いがありそうです。
本厚木から小田原にかけては、実際の需要と運行される本数や両数が合っておらず、課題がないとはいえない状況となっています。
設備面の関係で、本厚木を運行上の境界点とせざるを得ない状況ですが、小田原寄りに6両までしか停車できない駅があるため、効率を考えたダイヤを組んだ場合、どうしても列車の両数に制約が生じてしまうのです。

新駅がどの程度の規模になるのかは不明なものの、新宿方面と小田原方面の両方に折り返しができるような構造になれば、様々な問題が解決に向かう可能性があります。
運行上の課題が多々ある中で、設備面の改良を行わないことに違和感がありましたが、今回の新駅がそれに対する答えとなるのでしょうか。

おわりに

正式発表はまだですが、報道内容を見る限りでは、かなり具体的に検討が進んでいると思われます。
伊勢原駅周辺の再開発も発表されていることから、今後小田急の運行形態が大きく変化する可能性もあり、色々と楽しみになってきました。