多種多様な列車が運行され、利用者は目的地や所要時間に応じた列車を選んで乗車する小田急線。
利用者が多い駅を中心に優等列車が停車し、主要駅等と呼ばれていますが、多くの駅では停車する電車がスピードを落としてホームへと入っていきます。

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他の駅ではもっとスピードを出したままなのに対して、必要以上にスピードを落としているようにも感じられますが、これはなぜなのでしょうか。

停車場か停留場かの違いで生まれる減速

小田急に乗っていると、主要駅を中心にスピードを落としてからホームに入っていくことに気付きます。
下北沢のように高速で進入する主要駅や、開成のように主要駅ではないのにスピードを落とす駅もありますが、利用者の感覚としては主要駅での減速をイメージするでしょう。

このような違いが生まれる背景には、駅が停車場か停留場のどちらなのかという点が関係しており、前者の場合に発生します。
停車場というのは、場内信号機や出発信号機等の絶対信号機がある駅が該当し、そうではない駅は停留場として区別されます。
絶対信号機というものは、どんな状況でも逆らうことができない信号であり、赤が出ている場合には手信号で誘導される場合を除き、進むことができません。
厳密にはもっと複雑な説明が必要なのでしょうが、この記事では割愛します。

絶対信号機があるのは基本的にポイントのある駅で、主要駅の多くが該当するのはこれが理由です。
待避線がない開成が停車場となっているのは、駅に留置線が設けられているためで、ポイントがない主要駅である下北沢は停留場ということになります。

さて、スピードを落として駅に入る理由ですが、小田急では車両が停止して発車時刻になるまでは、停車場の出発信号機を赤にしているため、必然的にその手前にある場内信号機でも速度制限がかかります。
ホームに45km/h程度で入っていくのはこれが理由ですが、通過列車の場合には緑となっているため、当然高速で通過できるというわけです。

出発信号機を赤にしている理由を考える

ホームにスピードを落として入る理由は分かりましたが、なぜ出発信号機は赤なのでしょうか。
例えば、待避線から電車が発車しようとしている時であれば、衝突を避けるために本線側の出発信号機が赤なのは分かりますが、小田急は車両が停止するまで赤にしているため、待避線に車両がいなくても赤となっています。
他社では停車場であっても本線側は緑のケースが多く、小田急はやや特殊なケースといえるでしょう。

理由の一つとして、誤って駅を通過してしまうことを防止することがあげられます。
停車駅を勘違いしていたとしても、信号に従えば結果的に通過することはなくなるため、複数の列車種別がある小田急においてはメリットがあるといえます。
しかし、停留場の駅では信号で通過を防止することはできないため、これだけを理由とするのは少々弱く、他にも理由がありそうです。

定かではないものの、小田急は安全をかなり重視している会社であり、そのことが影響している可能性はありそうです。
ポイントがある駅で発生する恐れがある事故としては、赤信号を進んでしまったことによる衝突が考えられますが、両方が赤であれば可能性は低くなります。
さらに、ポイント通過時のスピード超過も起きにくくなるでしょうし、利用者が多い主要駅では人が不慮に転落した際に停まれる確率も上がるため、そのあたりも考慮しているのかもしれません。
発車時刻まで出発信号機が青にならないことは、早発の防止にも寄与しそうです。

実際のところ、誤って通過することを防止する以外の理由ははっきりしませんが、この運用を長年継続していることもあり、技術的なことも含めて気になるところです。

おわりに

ゆっくり駅に入ることについて、やや疑問を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
人で溢れ返っている駅においては、進入速度が遅いことで安心して乗っていられる面もあり、小田急らしいといえるかもしれませんね。