小田急の車両イメージといえば、一般的にはどんなものであろうか。
ロマンスカー、白い車体に青い帯、幅広車体、色々なものがありそうです。

最近は存在感が薄れていますが、その中にワイドドアというイメージもあったのではないでしょうか。
全車ではないものの、1000形から3000形まで、小田急では扉の幅が広い車両を製造し続けたのです。

そう、1000形でワイドドア車を製造し、大失敗したのにもかかわらずです。

1000形で採用したワイドドアは、その幅が当初2mもありました。
同時に多くの人々の乗降が可能になることで、停車時間が短くできると考えられたからです。

しかし、実際にはそのように上手くはいかず、必要がない人がホームに出る機会が増えてしまい、かえって停車時間が延びてしまいました。
また、座席数を犠牲にしたことで、乗客からの評判も最悪でした。

その失敗を教訓として登場したのが、扉の幅を1.6mにした2000形です。
車端部こそ1人分少なくなっていますが、扉間は7人分の座席を確保することで、座席数の問題は一応クリアしました。
小田急は1.6mを気に入ったのか、1000形も同様の開口幅に改造します。

2000形は全車がワイドドアで製造され、そのまま3000形の1次車へと引き継がれました。
4編成の3000形がワイドドアで登場した後、標準化の流れで小田急の車両は通常の扉幅に戻りました。

ここで感じる疑問は、1.6mのワイドドアに、どこまでの効果があったのかということです。
実験等も行われ、効果があったといったような発表を見た記憶がありますが、体感的にその差を実感したことがないのです。

実際問題、ノーマルドアとワイドドアは共通で運用されたので、そんなに顕著な差が出たとしたら、それはそれで問題があります。
体感的な判断ではありますが、おそらくほとんど差はないのだろうと思います。

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なぜワイドドアを採用し続けたのか、それはおそらく失敗を認められなかったのだと思います。
組織ではよくあることですが、ワイドドアで改善するという前提があり、それに固執してしまったということなのではないでしょうか。

やめたくてもやめられない、それが3000形での採用に色濃く出ていたように思うのです。
標準化という大義名分は、ある意味で救いだったのかもしれません。
あくまでも私個人の感覚ですが、通常の扉幅に戻った影響はほとんどなく、車体幅が狭くなった悪影響のほうが強いように思います。

ホームドアの導入で支障になってしまうという結果は同じでしたが、多扉車はある程度上手くいっていました。
日比谷線においては、5扉車の効果は目に見えて分かるほどです。

何かに固執してしまう小田急の傾向は、VSE等でも感じています。
それが小田急の魅力でもあり、小さな失敗を大きな失敗に広げてしまうという弱点でもあるように思うのです。