横幅2mのドアを備え、ラッシュ時の切り札として登場した小田急1000形のワイドドア車。
結果的には失敗となってしまったそのドアですが、小田急にはそれ以前にもワイドドアを備えた車両が在籍していました。

その車両とは、荷物電車として使われたデニ1000形、デニ1300形です。

デニ1000形は、1927年に登場したモニ1形から繋がる形式です。
登場時から大きい扉を備えており、調べる限り開口幅は183cmだったようです。

このデニ1000形ですが、後に1500形の旧車体を活用して大型化が図られます。
晩年の姿は車体交換後のもので、横幅2mの大きなドアを備えていました。

横幅だけで見れば、元祖ワイドドア車と表現できるサイズでした。
しかし、あくまでも用途は荷物電車ですので、元祖と言ってしまうと過剰かもしれません。

もう1形式、ワイドドアを備えていたのがデニ1300形です。
こちらも荷物電車ですが、デニとなる前はデハ1300形であり、旅客輸送にも使用されていました。
横幅1.5mのドアを備えており、幅こそデニ1000形より狭いものの、こちらのほうが元祖と表現して良い存在かもしれません。

20190210_03

最後の荷物電車として残ることになったこの2形式が、同様にワイドドアを装備していたことになるわけです。
その横幅は、偶然にも1000形のワイドドア車が持つ横幅と一致し、奇妙な偶然となっています。

標準化とホームドアの設置により、今後消えていくことが予想されるワイドドア。
小田急の歴史を振り返ると、ワイドドアが消滅した期間は意外なほど少なかったことが分かります。