全196両が登場し、現在も小田急の主力形式として活躍する1000形。
編成や外見のバリエーションが多いのが特徴ですが、それはその時期の小田急が様々な課題を抱えていたことの裏返しでもあります。

1000形の増備過程を見ると、小田急が何を解決しようとしていたのかが見えてきます。
登場順に見ていくことにしましょう。

東京メトロの千代田線直通を前提とした形式ですが、最初に登場したのは地上専用の編成でした。
4両の1051Fから1058Fがこれに該当しますが、この編成には各停の8両化を推進する目的がありました。
多摩線から小田原線への直通各停や土曜急行にも使われ、基本的に2編成を組み合わせた8両を組んでいました。

続いて登場したのが地下鉄直通用の編成で、4両の1059Fから1066Fまでと、6両の1251Fから1256Fまでが該当します。
4両と6両を組み合わせた10両で使用されますが、4両が2編成多くなっていることから、運用に柔軟性を持たせて各停の8両化を増強する目的もあったものと思われます。
9000形を1000形に置き換えた目的としては、地下鉄線内で冷房の使用を開始することに伴う、温度上昇を抑える意図があったものと思われます。

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その後に4両の1067Fから1069Fが地上専用車として登場し、各停の8両化をさらに推進しました。
編成数が奇数となったのは、検査時等にも8両が組めるようにする意図だったのでしょう。

1000形の増備はさらに続き、今度はドアを2mとしたワイドドア車が登場します。
4両の1551Fから1556Fと、6両の1751Fと1752Fがこれに該当します。

平成になっても小田急のラッシュは激しさを増し、抜本的な改善は複々線化しかない状況でした。
京王の5扉車やJR東日本の6扉車も登場し、各社がラッシュ対策に頭を悩ませていた時期です。
ワイドドア車はラッシュ時の切り札として登場しましたが、結果は上手くいかず、比較的少数のグループとなりました。

ワイドドア車の増備途中には、10両固定編成の1091Fも登場します。
それまでの小田急は、4両と6両を組み合わせて10両の運転を行っていましたが、中間に先頭車が2両入ってしまうことで、その部分の客室スペースが無駄になってしまう問題がありました。

固定編成化はそれを解消することが目的で、分割併合の必要がない地下鉄直通用だからこそ可能なことでした。
1091Fの後に1094Fまで登場し、固定編成化の先駆けとなりました。

固定編成化は8両にも及び、1081Fも登場しました。
たった1編成の登場となりましたが、2600形の8両編成も合わせ、各停の輸送力を少しでも増やす努力が行われています。

様々なタイプを製造することで、多種多様な課題を解決しようとした1000形。
豊富なバリエーションが生まれたのには、ちゃんとした理由があったのです。