1927年に新宿から小田原までの全線を一気に開業させた小田急。
開業時から高速輸送を念頭に置き、当時としては最新の設備を導入してのスタートでした。

高速輸送を考えていたことは駅の配置等に反映されており、上下線で共用する島式ホームがほとんどありませんでした。
これは駅の前後にカーブができることを避けたためといわれています。

しかし、小田急が妥協したのではないかと思われる設備があります。
それが小田原線と江ノ島線に存在する、単線が2本並んだトンネルです。
上下線のトンネルは少し離れており、前後にはカーブがあります。

調べてみたところ、当時の技術でも複線のトンネルは建設できたようです。
しかし、小田急は単線のトンネルとなっています。
小田原線は開業から半年程度、稲田登戸(現在の向ヶ丘遊園)から先が単線でしたが、江ノ島線は最初から全線で開業していますから、関係ありそうで関係なさそうです。

そこで考えられるのが、当時の技術水準と建設費、そして建設期間です。
小田急が設立されたのは1923年で、起工式は1925年11月に行われており、約1年半で全線を一気に開業させました。
全体としては過剰な設備を導入した小田急ですが、トンネルに関しては妥協するしかなかったのではないでしょうか。

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地形に合わせたカーブ以外は無駄なカーブが少ない小田急ですが、トンネルの前後だけは違っています。
本当は複線のトンネルとしたかったのではないか、そんなことを考えてしまいます。

1974年に開業した多摩線では複線のトンネルが採用され、全線が道路と立体交差するという高規格な路線となっており、本来はもっと高速で走ることが可能です。
しかし、現状はその規格を活用できておらず、少々残念なことになっています。

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地味な存在のトンネルですが、そこには色々な事情が隠れているのでしょう。
小田原線と江ノ島線、多摩線との風景の違いを演出するものでもありますね。