1996年にNSEの置き換え用として登場し、20m車の10両という輸送力を活かして特急の利用者数増加に貢献した小田急のEXE。
1999年までに70両が増備され、ロマンスカーのイメージを大きく変えました。

EXEの登場後、途中駅を重視した施策が行われたことで、特急の利用者は増加しました。
反面、箱根特急の利用者は大きく減少し、全てが上手くいったわけではなかったのです。

本来は観光輸送用ではないEXEが、はこね号等にも使われてしまったためといわれていますが、私は少し違う見方をしています。
私の本業は広告屋なのですが、その視点から見ると、EXEが引き起こした失敗が見えてきます。

小田急の広告では、イメージリーダーとしてEXEが使用されるようになりました。
観光輸送用ではないEXEが、観光の広告に使われてしまったのです。
訴求するターゲットに対しては不適当であり、当然広告の効果は悪くなってしまいます。

分かりやすく表現すれば、男性向けのゲームに対して女性が興味を持ちそうな男性キャラクターで広告を作るようなもので、これが箱根特急の利用者が減少した理由だと考えられます。
小田急もこの問題点に対応するため、イメージリーダーをHiSEに戻す対応を行いました。

EXEを広告に起用する場合には、ホームウェイを訴求する場合等、ターゲットに合ったものである必要があるのです。
その場合、外見よりも車内の快適性等、見せ方の工夫も必要になるでしょう。

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その後、EXEの反省からVSEが生まれましたが、展望席がある車両を導入したかったというような単純な理由ではないのだと思います。
VSEの導入目的の裏にあるのは、新たなイメージリーダーの創出だと考えられます。
その証拠に、MSEの登場後に展望席を備えた車両は減少に転じています。

ゲームの例えを再び使うとすれば、VSEは新キャラクターの投入なのです。
つまり、象徴的な列車や、利用の中心となる時間帯に魅力的な車両が走っていれば、それ以外は別の車両でも良いということになります。
もちろん限度はありますが、それが現在のロマンスカーの布陣に見え隠れします。

EXEは良い車両であり、外見の好き嫌いは出ると思いますが、乗る分にはとても快適な車両です。
しかし、箱根観光を訴求する場合の外見としては、あまりにも不適当だったといえるのではないでしょうか。