2002年のダイヤ改正で新たに設定され、東京メトロ千代田線と多摩線を結んでいた小田急の多摩急行。
たまきゅうと呼ばれ利用者に親しまれていましたが、複々線が完成した2018年のダイヤ改正で廃止されました。

多摩急行は、多摩線において全日に渡って運転されるようになった初めての優等列車です。
開業以来、多摩線は線内の折り返し運用が中心で本数が少なく、競合する京王相模原線とは明らかな差がありました。
沿線の人口は徐々に増えていましたが、小田原線の線路容量が限界に達していたこともあり、車両の両数や本数を増やすことで対応してきたのです。

一方、千代田線との直通運転はラッシュ時が中心で、小田原線を準急で運転していました。
2000年に高架化の進展で経堂に10両の列車が停車できるようになったことから、直通運転の本数が一気に増やされ、30分に1本の間隔で走るようになりました。
そして、2002年からは千代田線直通列車のほとんどを多摩線方面として、多摩急行の運転が開始されたのです。

多摩急行は急行と似た停車駅の種別ですが、運転される区間が限定されていました。
全列車が千代田線と直通し、多摩線の唐木田まで走ることが特徴で、利用者にはとても分かりやすい列車だったといえます。

小田急線内の停車駅は、代々木上原、下北沢、経堂、成城学園前、登戸、新百合ヶ丘、栗平、小田急永山、小田急多摩センター、唐木田で、急行が停車する向ヶ丘遊園は通過していました。
向ヶ丘遊園を通過することには賛否両論があり、多摩急行の停車に関する要望が度々出されていました。

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使用される車両は、小田急側が1000形、東京メトロ側が6000系と06系でスタートしました。
運用の関係で小田急の車両は千代田線内を往復することが多く、日中は多くが東京メトロの車両となっていました。
後に小田急側は4000形に交代、東京メトロ側は16000系が加わりますが、多摩急行自体にはあまり変化がない時代が続きます。

多摩急行に大きな変化があったのは2016年のことで、JR東日本の常磐緩行線と小田急の直通運転が始まったことで、E233系2000番台も充当されるようになりました。
しかし、このタイミングで日中は急行での運転に変更が行われ、多摩急行自体の本数は大きく減少、ラッシュ時間帯を中心とした運行となりました。

JR東日本が加わり賑やかになった多摩急行でしたが、2018年のダイヤ改正で千代田線系統の直通運転は多摩線にほとんど入らないようになり、同時に多摩急行は廃止されることとなりました。
多摩線の急行は新宿との間を結ぶようになり、2002年から続いていた千代田線系統と多摩線を結ぶ運転パターン自体も過去のものとなったのです。

多摩線沿線の利便性を大きく向上させた多摩急行。
残念ながら廃止されてしまいましたが、残した功績はとても大きかったのではないでしょうか。