全196両が製造され、3000形に抜かれるまで小田急で最大の勢力を誇った1000形。
バリエーションが豊富なことが特徴で、4000形に交代するまでは東京メトロ千代田線への直通運転にも使用されていました。

その1000形の中に、番台が他とは完全に分かれているグループが存在します。
側扉の幅を2mとしたワイドドア車と呼ばれるグループで、1500番台に番号が分けられたことから、1500形と呼ばれることもあります。

ワイドドア車は1991年に登場、ラッシュ時の切り札として期待されていました。
当初は10両全車がワイドドア車という運用もあり、それだけラッシュ時の混雑がひっ迫していたことを物語っています。
この時期は各社でラッシュ対策用の車両が登場しており、JR東日本の6扉車や、京王6000系の5扉車等が相次いで登場しました。

小田急の場合は、整列乗車を乱すことを嫌ってワイドドア車を採用しましたが、かえって乗降に時間がかかる事例や、座席数の減少が生じたことによって苦情が多発してしまいます。
そこで、1997年度から扉の開口幅を1.6mとする改造が行われ、外側から見た姿は2mのままで変わらないものの、車内は完全に1.6mの幅に合わせたものとなり、車端部を除いて座席数も増加しました。

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改造によって弱点を克服したワイドドア車は、4両が通常の1000形と組んだ8両で各停に、6両は各停から急行まで幅広く使われました。
しかし、これで安定するかと思われたワイドドア車には、さらに大改造されるという運命が待っています。

古い車両を大量に置き換えるため、2001年度に3000形が登場しました。
当初は6両ばかりが製造されましたが、2003年度から8両が製造されることとなり、8両を組んでいた4両の1000形をばらし、4000形や9000形の4両を置き換えることとなりました。
その過程で、ワイドドア車の4両である1551Fから1556Fの組み替えが行われ、一部の先頭車を中間車化し、6両の1753Fから1756Fとなりました。

こうして6両が6編成となったワイドドア車は、優等列車の主力として活躍します。
今度こそ安定すると思われましたが、不幸な歴史は残念ながら繰り返され、ホームドアの導入によって新宿に優等列車として入線することが困難となってしまいます。
ワイドドア車には単独で使用するという制限がかかってしまい、のんびりと小田原線の末端区間や支線を中心として活躍するようになりました。

リニューアルの対象から外されたワイドドア車は、5000形の導入によって廃車になることが予想されています。
改造を重ねたワイドドア車の歴史は、いよいよその幕を閉じようとしているのでしょう。