2020年から営業運転を開始し、現在までに4編成が製造された小田急5000形。
拡幅車体や張り上げ屋根の復活、帯のデザイン変更等、小田急の意気込みが伝わってくる車両に仕上がっています。

今回は、5000形の近年の車両との違いや、小田急がこの車両に込めた狙いを探ってみたいと思います。

近年登場した小田急の通勤型車両の傾向

平成に入ってから、小田急では4形式の通勤型車両が新たに登場しました。
2000形、3000形、4000形、そして今回の記事の主役である5000形です。

小田急では、昭和の終わりに登場した1000形から、オールステンレスの車体を採用しました。
2000形はこの1000形とほぼ同じ前面となっており、側面の扉の幅を1.6mとした車両です。
外見的なイメージは1000形とあまり変わりませんが、搭載している機器は全く別のものとなっており、コストを抑えつつ車両としてのグレードアップを図った実用的な形式です。

2000形の後に登場した3000形はより一層この考え方が強くなり、小田急の車両とは思えない外見を採用しました。
しかし、車両の性能はかなり向上しており、東京メトロ千代田線への乗り入れを行わない形式としては、それまでの車両より高性能となっています。
安っぽいと表現されることも多い形式ですが、実際には安くないといわれており、実用的な部分にお金をかけているということでしょう。

4000形もこの流れが続いており、JR東日本への乗り入れを想定していたと思われる事情があるものの、E233系をベースとしてコストを抑えています。
一方で小田急らしくお金をかけたと思われる部分も散見され、メリハリのある車両に仕上がっています。

これらの形式に共通することは、外見的なインパクトはあまりないものの、車両の性能といった実用的な部分に力点が置かれていると考えられることです。
バブル崩壊による不景気や、複々線化への投資があり、大変だったことがうかがえます。

小田急の方針転換が見え隠れする5000形

4000形の登場から約12年が経過し、古い車両の置き換えをする時期となった小田急では、新形式として5000形を新たに登場させました。
初めて5000形を見た時の私の感想は、最近の流れから転換するのかもという期待でした。

小田急の周辺を走る私鉄各線は、近年車両のイメージアップに取り組んでいるように思います。
京王は5000系で大きくデザインを変更し、京急や相鉄はオールステンレスの車体をわざわざ塗装しています。
青い帯を巻くだけのシンプルなデザインの小田急は、周辺の私鉄に比べると、ロマンスカーという象徴的な車両があるものの、少々地味な通勤型車両が走る路線になりつつありました。

5000形は小田急らしい保守的な部分も目立ちますが、大胆な前面デザインの採用や、帯の2色化といった部分に攻めの姿勢も見られます。
従来のイメージを残しつつ、通勤型車両のイメージアップを図りたいという狙いが見え隠れします。
ややおとなしめではありますが、近年の通勤型車両では最もイメージアップに力を入れているのではないでしょうか。

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利用のしやすさはもちろんのことながら、私鉄にとっては施設や車両のイメージも大切です。
それは沿線のイメージにも直結し、間接的に沿線価値向上にも寄与します。
拡幅車体の復活によって車内の快適性を向上させ、外見にも力を入れる、そして性能も十分すぎるほどのものを5000形は持っています。

小田急が5000形に込めた強い思いが、この車両からは伝わってくるのです。

おわりに

今はまだ見かけることが少ない5000形ですが、主力車両として今後も増備されることが見込まれます。
個人的には歓迎している車両であり、さらなる活躍がとても楽しみです。