1989年に車両の冷房化率が100%となり、非冷房車が在籍しなくなった小田急。
厳密には、モノレールの500形や、乗り入れてくる営団地下鉄(現在の東京メトロ)千代田線の6000系に非冷房車がありましたが、それは無視することとしましょう。

さて、小田急の非冷房車といえば、乗務員扉の直後の戸袋部分が、窓ではなくルーバーとなっていました。
この部分がなぜルーバーとなっていたのか、今回はその理由をご紹介します。

ルーバーとは何か

ルーバーは、羽板と呼ばれる細長い部材を平行に複数並べたもので、鉄道車両以外でも用いられているものです。
身近なものでは、百葉箱等をイメージすると分かりやすいかもしれません。

用途としては、目隠しや外部からの風雨を遮るために設けられ、鉄道車両の場合は雨等を遮りつつ、外気を取り入れる目的で使われることが多いようです。

小田急の車両にはなぜルーバーが装備されていたのか

2400形、2600形、4000形、5000形の非冷房車は、乗務員室の直後にある戸袋窓がルーバーとなっていました。
小田急の非冷房車を象徴する装備でしたが、先ほど述べた4形式以外にはありません。

なぜルーバーとされていたのかについては、この4形式の共通点が関係しています。
非冷房車の中で、この4形式のみが両開きの側面客用扉を採用しており、乗務員室の直後に開閉可能な窓を設置することができなかったのです。
この部分に窓がないことで空気の循環が悪くなってしまいますが、戸袋窓を開閉可能にすることはできないため、ルーバーとすることで外気を取り入れられるようにしました。

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肝心のルーバーが写っていませんが、このような非冷房車では暑い時に窓を開けることが必須であり、夏場に空気が循環しない影響が大きかったのです。

しかし、ここで問題となるのが冬場です。
寒い冬になると、今度はルーバーから外気が入ってくることが問題となってしまいます。
そこで、冬場はルーバーをガラスに交換し、外気が入ってこないようにしていました。
さすがに交換は面倒だったようで、後にルーバーとガラスの交換は行われなくなり、冬場は仕切り板を取り付ける運用に変更されています。

ルーバーは冷房化の際にガラスへと交換され、2400形の廃車と4000形の冷房化によって姿を消しました。

おわりに

冷房化率が100%になったことで、小田急の車両から消滅したルーバー。
消滅から30年以上が経過し、鉄道車両の冷房が当たり前となった現代においては、このような細かい努力が昔は行われていたということが信じられませんね。