平成に入ってから初めてのロマンスカーとして、1990年に登場した小田急のRSE。
JR東海の御殿場線と相互直通運転を行うため、ロマンスカーでは久し振りのボギー車となりました。

RSEには独自の部分も多くありますが、全体としてはJR東海の371系と基本仕様が合わせられており、編成中にダブルデッカー車が2両組み込まれています。
小田急の車両で、過去から現在まで唯一のダブルデッカー車となったこの2両、今回はその車内がどんな風になっていたのかをご紹介します。

編成中に2両が組み込まれたダブルデッカー車

7両編成のRSEは、新宿方から4両目と5両目がダブルデッカー車になっていました。
サハ20150とサハ20250とされており、20001Fにはサハ20151とサハ20251、20002Fにはサハ20152とサハ20252が組み込まれ、合計は4両となっています。

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ダブルデッカー車の2両は隣接して連結され、両車の間は高床式の幌で繋がれており、通り抜けは2階席のみとなっていました。
1階席は通り抜けができない構造となっていましたが、非常口が連結面側に設けられています。

他の車両と隣接する側の連結面には、デッキと階段が設置されており、編成全体がハイデッカーであったことから、上下のどちらの階に行くのにも階段を通る必要がありました。

旅を快適にしたスーパーシートとセミコンパートメント

RSEに組み込まれたダブルデッカー車は、ただの2階建て車両ではありませんでした。
御殿場線との相互直通運転を行うにあたって、RSEにはJRのグリーン車に相当する席が設けられており、小田急ではスーパーシートと名付けられました。
ダブルデッカー車の2階席がそれに該当し、編成中の2両にスーパーシートが設けられていました。

小田急のファーストクラスをテーマにしたこの特別席は、横が3列の配置となっており、シートピッチも1,100mmと広くなっています。
フットレストが装備された大型のリクライニングシートを採用し、当時としてはまだ珍しかった6インチの液晶テレビや、オーディオシステムが各座席に設置されました。

サハ20150の1階席は普通席ながら横が3列で、少しゆったりとした配置となっています。
特徴的なのはサハ20250の1階部分で、4席分のセミコンパートメントが3室設置されており、グループでの利用を想定した設備となっていました。

どちらのダブルデッカー車にも共通することとして、ビュッフェカウンターが設けられており、当初は走る喫茶室の基地となっていました。
その他、ラゲッジスペースやカード式の公衆電話が設置されており、他の車両にはない設備が集中的に配置されていることが特徴でした。

おわりに

このように夢が沢山詰まったダブルデッカー車でしたが、バブル崩壊後の観光需要の低迷や、バリアフリー化の障害という悪循環が続き、その実力を最大限に発揮することはできませんでした。
現在のところ、小田急では最初で最後のダブルデッカー車となっています。