小田急顔の前面デザインを採用した最後の形式として、1969年に登場した小田急5000形。
1978年からは、マイナーチェンジされた6両が製造され、5251Fから5270Fまでの20編成が登場しました。

これらの車両には、後に前照灯をシールドビーム化した編成があり、9000形の部品を流用したといわれています。
謎が多い5000形のシールドビーム化について、今回は検証してみたいと思います。

2000年度の車体修理施工車から始まったシールドビーム化

5000形のシールドビーム化は、車体修理に合わせて施工されたのが始まりです。
対象となったのは2000年度以降に施工された編成で、5262F、5263F、5266F、5267F、5268F、5269F、5270Fの7編成が該当します。
ただし、車体修理とは別に、後からシールドビーム化された編成もあるほか、車体修理の前に前照灯だけを改造した可能性もありえます。

さて、2000年度といえばもう一つ重要な出来事があります。
9000形の一部の編成から運転台が撤去され、半固定編成化されたのも2000年度なのです。
つまり、9000形から取り外した部品を流用して5000形をシールドビーム化したというのは、時期から考れば辻褄が合います。

20190512_01

しかし、ここでおかしな点に気付きます。
9000形で運転台を撤去したのは、全部で6両しかありません。
1両から2個ずつシールドビームの部品が取り外せますが、これだと3編成分しかないのです。

9000形の廃車とシールドビーム化の関係

9000形から取り外した部品だけでは、5000形のシールドビーム化には足りないことが分かりました。
そこで、9000形が廃車となった後に部品が流用された可能性を考え、9000形が全編成残っている2004年の終わりまでに改造された編成を調べてみました。
調べた結果は以下のとおりです。

5251F:原形
5252F:原形
5253F:原形
5254F:原形
5255F:シールドビーム
5256F:シールドビーム
5257F:原形
5258F:原形
5259F:シールドビーム
5260F:原形
5261F:原形
5262F:シールドビーム
5263F:シールドビーム
5264F:原形
5265F:原形
5266F:シールドビーム
5267F:シールドビーム
5268F:シールドビーム
5269F:シールドビーム
5270F:シールドビーム

結果は一目瞭然で、明らかに9000形からの発生品だけでは足りません。
また、車体修理後に前照灯が改造された編成としては、5255F、5256F、5259Fの3編成が該当します。

この結果から分かることは、9000形からの流用品ではない部品を使っている編成が多いということです。
それが予備品だったのか、わざわざ新製したのかは分かりませんが、9000形から取り外したものではない部品を使っている編成が多いことは確かです。

そして、2005年には9000形の本格的な廃車が開始されますが、その前後に前照灯が交換されたのは5265Fしかありません。
5265Fの前照灯は、2004年12月26日の時点では原形、2005年9月19日の時点ではシールドビームとなっており、9000形から取り外した部品で改造されている可能性はあります。
つまり、9000形の廃車によってシールドビーム化された編成はあったとしても1編成ということになるのです。

おわりに

最終的には、11編成がシールドビームとなっていた5000形。
9000形の廃車によって発生する部品も使い、20編成全てを改造する予定だったのかもしれません。
しかし、2006年には5259Fが早くも廃車となっていることから、計画の見直しによって改造が中止になったのかもしれませんね。