分割併合ができるロマンスカーとして、1996年に登場した小田急のEXE。
2007年にはMSEも加わり、4両と6両を組み合わせ、10両で走るロマンスカーは多数派となりました。

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日常利用のニーズも重視するようになったロマンスカーは、今後どうなっていくのでしょうか。
分割併合ができるロマンスカーの視点から、未来のロマンスカーを考えてみたいと思います。

利便性と輸送力が重視されるようになったロマンスカー

小田急のロマンスカーは、箱根や江ノ島に観光客を輸送するために登場しました。
車両には快適性や速達性が求められ、前面には展望席を設ける等、非日常を演出することに重点が置かれていました。

しかし、自動車が一般家庭に広く普及し、道路が整備されていくと、旅行の移動手段は多様化していきます。
観光輸送を担っていたロマンスカーにも影響があり、徐々に日常利用を想定した列車が増えていきました。
そして、老朽化したNSEを置き換える際には、4両と6両を連結し、10両編成で運転できるEXEが登場したのです。

EXEは観光輸送での利用も想定しつつ、日常利用を重視した設計となっているロマンスカーです。
使い方が中途半端だったことから、登場当初は批判的に見られた車両ですが、現在の利用動向を見る限りでは、この転換は正しかったといえるでしょう。
現在はこれにMSEが加わり、日常利用を重視した分割併合ができるロマンスカーが多数派となっています。

観光利用と日常利用の住み分け

現在のロマンスカーは、観光利用向けの設計となっているVSEとGSE、日常利用向けの設計となっているEXEとMSE、4形式で運用しています。
時間帯や方向によって利用者層が異なるため、ニーズに合った車両を充当するように配慮されており、午前中の観光利用が多い下り列車にはVSEやGSEを、ラッシュ時の列車にはEXEやMSEが多く充当されるといった住み分けがされていますが、完全に分けることは現実的に不可能なため、ある程度は混在している状況です。

日常利用に振り切った設計としたEXEの反省からか、MSEは観光利用でもそこまで違和感がないようにされていますが、住み分けるのはやはり簡単ではないことが伝わってきます。
非日常性の提供、車内の快適性、そしてラッシュ時にも対応できる輸送力、これらを両立することは簡単ではありません。

しかし、今後のロマンスカーのヒントは、GSEに隠されているように思うのです。
前面展望席を設けつつ、ボギー車の7両編成となったGSEは、今までにないタイプのロマンスカーとなりました。
分割併合が可能で、前面展望席を設けたロマンスカーが、今後登場する可能性はあるのかもしれません。

ラッシュ時の輸送は今後もロマンスカーが担うのか

もう一つ気になっていることは、小田急は今後もモーニングウェイ号やホームウェイ号にロマンスカーを使うのかという点です。
最近は各社で着席保障の列車が設定され、京王、東武、西武等で、続々と専用車両が登場しています。

昔から通勤時に座れる列車としてロマンスカーを走らせてきた小田急ですが、他社ではロングシートとクロスシートを切り替えられる車両が登場し、充当する列車によって座席のモードを切り替えています。
ラッシュ時に必要な本数を確保するために、ロマンスカーは編成数が若干過剰になっているように感じる部分もあることから、今後もロマンスカーだけで着席保障の列車を運用していくのかは気になるところです。
しかし、他社と比べて良い車両を充当しているという強みはありますから、今後もそれを活かしていく可能性は高そうです。

いずれにしても、これから利用者のニーズは大きく変化していくでしょうから、ロマンスカーにも何らかの変化があるかもしれません。
毎日通勤しない人が増えることは確実であり、より一層着席のニーズが高まる可能性があるようにも思います。

おわりに

次に登場するロマンスカーはどのような車両になるのでしょうか。
VSEのように観光向けに振り切った設計になるのか、それとも日常利用を重視した設計になるのか、現時点ではあまりにも未知数です。
今は色々な可能性を想像しつつ、その時を楽しみに待ちたいと思います。