HiSE以来久々に前面展望席と連接構造を採用し、小田急ロマンスカーのフラグシップモデルとして登場したVSE。
登場してからしばらくの間はホームウェイ号に使用されず、完全に特別扱いとなっていました。

現在はVSEとGSEの2形式が観光色の強いロマンスカーとなっていますが、GSEは日常利用も考慮した実用的な仕様となっており、VSEとは若干の差があります。
今回はVSEならではの特徴をおさらいしつつ、後継車両がどうなっていくのかを考えてみたいと思います。

ブランド価値の向上を徹底的に追及したロマンスカー

NSEを置き換える目的で登場したEXEは、それまでの車両と大きく仕様が異なり、各方面に衝撃を与えました。
ロマンスカーを日常的に利用する機会が増加しつつあり、それに対応させた車両がEXEでしたが、それまでの車両とはあまりにも違いが多かったことから、良い面と悪い面の両方が目立ってしまったといえます。

日常の利用では徐々に受け入れられたEXEでしたが、観光での利用には課題がある状況で、LSEやHiSEといった従来の車両がその役割を主に担っていました。
しかし、HiSEにはバリアフリー化への対応が困難という問題があったため、置き換え用として観光輸送に特化したVSEが登場することとなりました。

VSEは、箱根への観光輸送の役割を担うため、前面展望席を復活させ、ロマンスカーのブランド価値を高めることを目指していました。
前面展望席の復活以外にも、乗り心地を向上させるための連接構造の復活や、車体傾斜制御の採用等がされており、必要以上と表現できるほどの要素を詰め込んでいます。

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こうして登場したVSEは、見事にロマンスカーのブランド価値を向上させ、現在も第一線で活躍しています。
登場してからしばらくの間は、ホームウェイ号に充当されず、他のロマンスカーとは明確に差別化が図られていました。

特別扱いの終了とこれからのロマンスカー

LSEやHiSEの部品に不具合が見つかった影響で、2010年にVSEのホームウェイ号での運転が行われました。
これは、該当する車両が休車となってしまったために仕方なく充当したもので、VSEの特別扱い自体が終わったわけではありませんでした。

しかし、2016年3月26日のダイヤ改正からは、ついにVSEのホームウェイ号が定期列車で設定されるようになり、特別扱いをされなくなりつつあります。
2021年3月のダイヤ改正では、ロマンスカーの車内販売を終了することも発表されており、再びロマンスカーは日常利用を重視する方向に舵を切りつつあります。

この変化は少し前から表面化しつつあり、観光輸送を重視しつつも現実的な仕様とされたGSEが、まさにその象徴といえます。
GSEは登場した段階から特別扱いをされず、VSEが登場した時との違いが感じられました。

ホームドアの整備を進める関係で、連接構造を採用することが難しくなったという事情はありますが、GSEが比較的日常利用を想定した仕様となっていること、今後車内販売を終了することから見えてくるのは、ロマンスカーから観光色が薄れつつあるということです。
箱根にロマンスカーで行く需要がなくなるとは思いませんが、小田急としては日常利用を重視する方向なのだと思います。
MSEが多く増備され、前面展望席を設けた車両が4編成に減ったことも、日常利用へのシフトを裏付けているといえます。

VSEの後継車両は、どんな車両になるのでしょうか。
現在の流れが続くのであれば、GSEに準じた車両が登場し、観光輸送を担いつつ、日常利用でも使いやすい車両とされそうです。
少し寂しくは感じますが、これが時代に合わせた現在のロマンスカーの姿なのかもしれません。

おわりに

連接構造のロマンスカーとしては、最後の車両となってしまいそうなVSE。
小田急ファンの私としては、観光輸送に特化した気合いの入った車両を期待してしまいますが、日常利用が定着した現代では難しくなりつつあるのかもしれませんね。