小田急に在籍する車両の多くを占める通勤型車両。
近年は置き換えが行われず大きな動きがありませんでしたが、2019年に新形式の5000形が登場して状況が変わり、現在も置き換えのための増備が続けられています。

3000形からは「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」に沿った仕様が採用されるようになり、5000形も準拠している部分が多くなっていますが、3000形よりも前の形式は小田急ではお決まりとなっている仕様がいくつかありました。
それらの仕様は、小田急が乗客目線で車両を設計している証でした。

乗客目線を大切にしていた小田急の車両

3000形よりも前に登場した小田急の通勤型車両には、どの形式にも共通する特徴がいくつかありました。
それらは乗客の目線を大切にしていた小田急ならではのものが多く、快適な車内環境を提供することに役立っていたのです。

小田急の車両で共通していたものの代表格としては、戸袋窓と集約分散式の冷房装置です。
戸袋窓は車内を明るくする目的で設けられており、乗務員扉の後ろ等を除いて必ずあるものでした。
妻窓についても同様で、昔は車内の照明を昼間に消すことが多かったこともあり、太陽の光を車内に入れることを重視していました。
冷房装置については、集約分散式のメリットが採用の前提にありますが、車内をある程度均等に冷やせるという理由もあったようです。

20210116_05

その他にも小田急の車両ならではの部分は存在します。

7人がけの座席は途中で分割されておらず、乗客が切れ目に座ることがないように配慮されていました。
つり革の本数も昔から比較的多く、立っている乗客が少しでも楽に過ごせるようになっています。

乗り心地を良くするために、1964年に登場した2600形からは本格的に空気ばね台車を採用、昔から乗り心地の改善にも力を入れていたようです。

徐々に広がっていった戸袋窓の廃止

小田急の通勤型車両ならではの部分をいくつか挙げましたが、その中でも象徴的だったのが戸袋窓でした。
しかし、車体の腐食防止や、軽量化のために戸袋窓を廃止する動きが各社で広がり、小田急も含めて近年は基本的に設けられなくなりました。
小田急は比較的遅くまで戸袋窓を設けていた会社ですが、3000形の2次車でついに廃止となってしまいました。

関東で早期に戸袋窓を廃止した会社は、東急、東武、京成、相鉄、東京メトロで、反対に戸袋窓を近年まで設けていたのは、京王、京急、そして小田急でした。
国鉄も201系まで戸袋窓を設けていたため、比較的廃止は遅かったことになります。
面白いのは西武で、2000系で一度廃止したものの復活し、その後また廃止となっています。

最近は戸袋窓がある車両自体が減りつつあり、小田急も例外ではありません。
戸袋窓があると、晴れた日は車内の明るさが違うため、時代の変化とはいえ少々残念に思います。

おわりに

昔は小田急の車両といえばこれというものがいくつかありましたが、近年はめっきりと少なくなりました。
効率が重視される世の中になったことが原因ですが、その会社らしさというのが消えていくのは少々残念な部分もありますね。