東京都内を走り抜けてきた小田急線が、神奈川県内に入る境となっているのが多摩川橋梁です。
複々線化時に架け替えが行われ、現在は立派な橋梁となっていますが、架け替え前は開業時からの橋梁が長く使われていました。

今回は、架け替え前の多摩川橋梁と、神奈川県内に入って最初の駅となっている登戸の思い出を振り返ります。

神奈川県内に入ったことを知らせてくれた多摩川橋梁の走行音

新宿を出発した小田急線は、住宅密集地の中を走り抜けて小田原や片瀬江ノ島を目指します。
その光景自体は今も昔も変わりませんが、都心部はほとんどが複々線区間となっており、一昔前とは様変わりしました。

多摩川橋梁も現在のものとは全く異なっており、開業時からの古い橋梁が使われていました。
鉄橋という表現が似合うような、まさにそんな橋でした。

そのような古い橋だったため、通過する際の音も現在のような静かなものではなく、車両が通過する度に賑やかな音を奏でていました。
まだ複線区間ばかりだった平成の初期までは、多摩川橋梁を渡るその音が、東京都と神奈川県を跨いだ合図となっていたのです。

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寝ていても、暗くて外が見えなくても、多摩川橋梁の音が聞こえれば、今どこを走っているのかが昔は分かったものでした。
しかし、東京都と神奈川県を跨ぐその橋梁は複々線化に合わせて架け替えられ、まずは上り線が新しい橋梁に、その後下り線も切り替えられ、過去のものとなってしまいました。

多摩川橋梁上にあった登戸駅のホーム

昔の多摩川橋梁といえば、登戸駅も忘れられない存在です。
現在の立派な駅とは異なり、川沿いの駅という表現が合う、厚木駅に似た雰囲気でした。

相対式の2面2線のホームは、小田原方の盛土からそのまま橋梁に繋がっていましたが、10両の停車に合わせて新宿方にホームを延長したため、ホームの一部は橋梁上にありました。
これは小田原方に勾配と曲線があったためで、それを避けるために新宿方にホームが延長されました。

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上屋があまりなく、スッキリしていた登戸のホームでしたが、多摩川橋梁の架け替えに合わせて大規模な改良工事が始まり、徐々に昔ながらの光景は失われていきました。
架け替えの最中には、一時的に上下線でホームの高さが違う時期があり、ホームとホームの間に階段がある面白い状態となっていました。
その後、下り線が新橋梁に切り替わったことでこのような光景は消滅し、多摩川橋梁と登戸駅は新しい時代へと入っていくこととなりました。

おわりに

多摩川橋梁を渡る際の音は、今でも私の記憶の中に色濃く残っています。
皆さまの記憶の中にある多摩川橋梁は、どのようなものとなっていますでしょうか。