山梨県内の大月から河口湖までを結び、富士山に繋がる鉄道としても有名な富士急行。
少し前までは、京王から譲渡された車両が多く走っていましたが、最近はJR東日本から譲渡された車両に置き換えが進んでいます。

その富士急行の車両を見ていくと、4や9の番号が振られた車両がないことに気付かされます。
忌み番だということは分かりますが、富士急行がこの番号を使わなくなった理由には、過去に発生した事故が関係しています。

17名が死亡した脱線転覆事故

1971年3月4日の早朝、富士急行で事故が発生しました。
場所は三つ峠から暮地(現在の寿)の区間で、3100形の3103Fが脱線して転覆し、17名の死者を出す大事故でした。

この事故は、富士吉田(現在の富士山)から月江寺の間にある踏切において、大月行きの電車が小型トラックと衝突、車両の下に入り込んだ小型トラックによって空気だめが破損し、ブレーキが使えなくなったことで引き起こされました。
当時の車両には保安ブレーキが装備されておらず、このようなケースではブレーキが使えなくなってしまう場合があったのです。

普通の路線であれば、すぐには止まることができなくても、徐々にスピードが落ちていくのでしょうが、富士急行は違いました。
山岳路線の富士急行は、路線のほとんどが勾配区間であり、車両は下り勾配を暴走することとなってしまいます。
月江寺、下吉田、葭池温泉前、暮地とスピードを上げながら通過した車両は、その先のカーブでついに脱線して転覆、17名の死者と71名の負傷者を出す大惨事となりました。

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写真の左側に写っているのが、この事故で大破した3100形ですが、これは事故の当該とは異なる編成で、モハ3101とモハ3102で構成される3101Fです。
もうお分かりだと思いますが、事故の当該である3103Fは、モハ3103とモハ3104で構成される編成だったのです。

この事故の後、富士急行では4と9を忌み番とするようになり、末尾に使うことがなくなりました。
そして、相方となる3や0の番号も、末尾には使われなくなっています。

小田急から譲渡された車両の不揃いな番号

小田急の話題にも少し触れておくこととしましょう。
この事故の後には、小田急から1900形と2200系列が譲渡され、それぞれ5200形と5700形となりました。

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これらの車両も4と9を避けたため、番号はとても不揃いなものとなっていました。
各形式の編成表は以下のとおりで、左側が大月方です。

【5200形】
5261F:クハ5261-モハ5231
5262F:クハ5262-モハ5232
5263F:クハ5263-モハ5233
5265F:クハ5265-モハ5235

【5700形】
5701F:モハ5701-モハ5702
5705F:モハ5705-モハ5706
5707F:モハ5707-モハ5708
5711F:モハ5711-モハ5712
5715F:モハ5715-モハ5716
5717F:モハ5717-モハ5718
5721F:モハ5721-モハ5722
5725F:モハ5725-モハ5726

このように、多くの番号が飛ばされていました。
5700形は電動車だけだったことから、番号は26まで到達しており、16両に対してかなり大きな数字となっています。

おわりに

数々の不幸が重なって発生した富士急行の事故でしたが、事故後には空気ブレーキの系統を多重化するといった対策へと繋がっていきました。
過去の教訓は、現在の安全対策に活かされているのです。