小田原線の新百合ヶ丘駅から分岐し、唐木田駅までの10.6kmを結んでいる小田急の多摩線。
三つある小田急の路線の中では最も距離が短く、支線らしさが漂っています。

他の路線と比較すると、若干のんびりとした雰囲気がある多摩線ですが、1時間に3本程度の優等列車が運行されています。
今回は、近年縮小傾向が続く多摩線の優等列車にスポットを当ててみたいと思います。

徐々に増加してきた多摩線の優等列車

1974年に開業した多摩線は、長い間各停のみが運行される路線でした。
小田原線の輸送力が限界となっていたことや、優等列車を走らせるほどの乗客がいなかったことが理由でしょう。

そんな多摩線に優等列車が日常的に走るようになったのは、2000年のダイヤ改正でした。
1997年に喜多見から和泉多摩川の複々線化が完成したことで、小田原線に多少余裕が生まれ始めた頃のことです。
このダイヤ改正では、営団地下鉄(現在の東京メトロ)千代田線に乗り入れる急行が僅かながら設定されたほか、ロマンスカーを使用したホームウェイ号も運転されるようになりました。

2002年には多摩急行が登場し、1時間に2本程度と、高頻度で優等列車が運行される日常が始まります。
そして、2004年に区間準急が設定され、多摩線内は各駅に停車する種別ではあるものの、小田原線との直通列車が増加しました。

その後はあまり大きな変化がない状態がしばらく続きますが、2016年には多くの列車が多摩急行から急行へと変わり、1時間に3本程度が走るようになります。
しかし、区間準急と特急の運転はこのタイミングで廃止されてしまいました。

2018年には大きな変化があり、優等列車は新宿とを結ぶ列車へと変わり、快速急行や通勤急行の運転も始まりました。
この変更で攻めに転じたのかと思わされましたが、2020年のダイヤ改正では平日の夜間と、土休日の日中は優等列車の設定がなくなり、小田原線と直通運転をする急行は新百合ヶ丘で各駅停車に種別変更をするようになりました。
1時間の本数としては減ることとなり、合理化が始まったようにも考えられます。

あまり差がない各駅停車と優等列車の所要時間

多摩ニュータウン内で京王と並走する多摩線は、新宿方面への輸送で競争があります。
多摩急行の登場や、優等列車を新宿発着に変更したのは、対京王を意識した部分があると思われますが、2020年からは減便の方向となりつつあります。

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優等列車がないと、速達性の面で不利になりそうですが、所要時間という面では、実際のところあまり影響がありません。
以下は、各種別の平均的な多摩線内の所要時間です。

各駅停車:14~15分
急行:11~12分
通勤急行:13分

通過する駅が少なく、駅間の距離が長いため、各駅停車と優等列車にはそこまで大きな所要時間の差がありません。
しかも、通勤急行の所要時間が意外と長く、駅での停車時間を長めにしていることが分かります。

体感的には各駅停車のほうが長く感じるという面はあるものの、所要時間という点ではそこまで優等列車を走らせる必要はないのかもしれません。
速達性というよりは、新百合ヶ丘での乗り換えがなくなることを求めている乗客も多そうですから、優等列車であることよりも、小田原線と直通運転をすることを重視する可能性もあります。

現在は一部だけで行われている、急行の新百合ヶ丘での種別変更も、利用状況によっては今後拡大する可能性があるかもしれません。
所要時間という面でそこまで大きな差がない以上、通勤急行を多摩線内は各駅停車とする等の変更も考えられます。

現在の多摩線には、優等列車がそこまで必要ないのかもしれません。
減便の方向が始まった以上、今後大胆な変更が生じる可能性もあり、目が離せない状況が続きそうです。

おわりに

数年ごとに大きな変化が生じるようになった多摩線。
最適解がどれなのか、小田急も色々と試行錯誤を重ねているのかもしれませんね。