通勤型車両としては久々の新形式である5000形が登場し、車両の置き換えが進められている小田急。
拡幅車体の復活により、広々とした車内となっていることが特徴です。

東京メトロ千代田線への乗り入れ用として、JR東日本のE233系をベースとして登場した4000形を除くと、3000形以来の新形式となる5000形ですが、様々な面で小田急の方針が変化したことを感じられる車両に仕上がっています。
3000形と5000形、両形式の違いから、その方針の変化を考えてみたいと思います。

大量置き換えの必要性に迫られて登場した3000形

2002年に営業運転を開始した3000形は、大量増備によって小田急で最大の勢力となりました。
現在は346両が在籍しており、小田急線上のどこにいても、頻繁に見かける車両となっています。

1989年に2400形が形式消滅して以降、小田急では通勤型車両の編成単位での廃車がしばらく行われず、リニューアルや組み替えを行いつつ、増備だけが行われていました。
編成単位での廃車は、2000年に2600形の2666Fで行われるまで途切れており、約11年間もなかったことになるのです。

この背景としては、バブル崩壊後の不況や複々線化事業への投資がある中で、輸送力の増強のために車両を増やしていたこと等が考えられます。
1000形や2000形の増備によって輸送力は増強されますが、2600形や4000形の老朽化は進み、2000年前後には見た目にも痛みが分かる車両が増えてきました。
そこで3000形が登場しますが、それまでの車両とはあまりにも違う姿で、小田急ファンを驚かせることとなります。

切妻に近く非貫通の前面、垂直車体の採用、張り上げ屋根ではないこと、外見はそれまでの車両とあまりにも異なり、コストダウンされた印象を受けたものです。
一方で、千代田線に乗り入れない車両を除くと、足回りはそれまでと比べてかなりパワーアップされており、外見を犠牲にして足回りにお金をかけたことがうかがえます。

こうして登場した3000形は、ハイペースで従来の車両を置き換え、途中で4000形の増備に移行しつつ、5000形までの各形式が小田急線上から消えていきました。

小田急らしさが戻ってきた5000形

2012年に旧5000形が形式消滅して以降、小田急ではしばらく通勤型車両の置き換えが行われませんでした。
しかし、2020年に新5000形が登場したことで、8000形や1000形の置き換えが開始されました。
前回の約11年よりは短いですが、約8年のブランクがあったことになります。

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この5000形、デザインについては好き嫌いがあることなので論じませんが、3000形からの流れを明確に断ち切る意思を感じる車両となりました。
拡幅車体や張り上げ屋根の復活、全体的にスマートな外見、3000形であまりにも合理的な設計に振り切った方向性からの転換だといえるでしょう。

足回りについても性能は落とされておらず、全体的に高品質な車両となっています。
車内についても同様で、強化ガラスを多用することによる広く見せる工夫や、座席の座り心地が良くなっている等、3000形で否定的な意見が出た部分を徹底的に改良してきた印象です。

複々線化事業が終わり、車両の置き換えペースも以前よりは急ぐ必要がないこと、そして景気が回復したこと、これらが5000形という車両を生み出す流れに繋がったのでしょう。
小田急に余裕が出てきたことを感じさせます。
一方で、新型コロナウイルスによる影響が今後出てくる可能性もあり、その点は少し心配でもありますね。

おわりに

3000形と5000形には、時代背景が反映されているようにも思います。
同様の傾向は各社で見られますが、近年は多くの会社で車両の品質を以前よりも良くする方向となってきましたね。