地上と地下にホームが分かれており、合計5本の線路で折り返し列車をさばいている小田急の新宿駅。
優等列車が地上、各駅停車が地下のホームに発着しており、どちらかというと地上ホームのほうが賑やかな雰囲気となっています。

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そんな新宿駅には、かつて珍しい停止位置目標が存在していました。

小田急の新宿駅にあった珍しい停止位置目標

駅や引き上げ線には、車両を停止させる位置を示すために、停止位置目標が設置されています。
線路から立ててあるものや、上屋から吊るしてあるもの、枕木に置かれているもの等、その形態は様々です。

停止位置目標には、車両の種類や両数が分かるような表記がされている場合があり、運転士はそれを目標として正しい位置に停車させます。
小田急は両数で分かれていることが多く、その他にはロマンスカー用のものが設置されています。

現在の新宿には、ホームの下にあまり目立たない停止位置目標が設置されていますが、かつてはホームの上まで出ているものがありました。
それは軌道内に設置されていたものでしたが、とても面白い状態となっていたのです。

進みすぎるとぶつかってしまう停止位置目標

新宿に設置されていた停止位置目標は、軌道内からホームの上まで到達する長いものでした。
高さは前面窓の下ぐらいまであり、視認性は抜群だったものと思われます。

さて、新宿のホームといえば、乗車用と降車用に分かれていることが特徴です。
車両の両側にホームが存在し、到着した車両は両側のドアを開け、素早く乗客が乗り降りをするのが日常の光景となっています。

ここでおかしなことに気付くと思いますが、新宿で軌道内に設置されている停止位置目標が前面窓の下まであるということは、車両にぶつかる位置にあるということを意味します。
つまり、停止位置目標を少しでも越えてしまうと、車両がぶつかってしまうのです。

ぶつかるのを避けるために、余裕がある状態で停車させると、本来の停止位置からずれてしまいます。
しかし、進みすぎると車両が停止位置目標にぶつかってしまいます。
できる限りギリギリで車両を停車させるというチキンレースが、小田急の新宿駅では毎日のように繰り広げられていたのです。

実際に当たってしまうこともあったようで、倒れてしまったとか、徐々に傾いていったという都市伝説も聞かれます。
なぜこのような設置方法となっていたのかについては、現在も謎のままです。

おわりに

現代では考えられないような設置方法だった新宿駅の停止位置目標。
駅の改良工事が終わる頃、ひっそりと消えていったようです。