優等列車を中心に小田原線との直通列車はあるものの、多くの列車が線内の折り返し運用となっている小田急の多摩線。
優等列車が走っていなかった頃は、ほとんどの列車が折り返し運用で、方向幕には専用のコマが設けられていました。

折り返しの際に、幕回しをする手間を省くことが目的だったと思われるこのコマですが、駅の配置が左右で違う2種類が存在していました。

多摩線用の折り返し幕とは

多摩線が新百合ヶ丘から小田急多摩センターまでだった頃は、ほとんどが多摩線内を折り返し運転する列車でした。
同じ車両が行ったり来たりするのみで、今とは比較にならないぐらいのんびりした路線だったのです。

短い区間の折り返し運転では、必然的に折り返す回数が多くなります。
終点ではその都度幕回しをする必要が生じますが、自動で幕回しができない車両も多かったため、その手間を削減するために、折り返し運転用のコマが設けられることとなりました。

小田急で折り返し運転用のコマが用意されたのは主に前面で、短い区間での使用を想定したものです。
新松田から小田原、藤沢から片瀬江ノ島、そして新百合ヶ丘から小田急多摩センターがありましたが、動作が自動化された後の黒地の幕では多摩線用のみとなりました。

20210703_03

現在もコマ自体は残っており、運が良ければ幕回しの最中に見ることができます。
先日種別幕が無表示の状態で見る機会があり、懐かしい姿だったことから、この記事を書くことにしました。

左右の違いで2種類ある折り返し用の行先幕

これらの折り返し用のコマですが、昔撮影された写真をみるとあることに気付きます。
車両によって左右に書かれている駅が異なり、多摩線用のコマであれば、左側が新百合ヶ丘だったり多摩センターだったりするのです。

側面に設けられているコマが海側と山側で異なるように、上り方と下り方で異なるのではないかとも思いましたが、そんなこともありませんでした。
どちらにも両方のパターンがあり、法則性がまるでないのです。
しかし、これらの違いは白地の幕だけのようで、黒地の幕は左側が新百合ヶ丘で統一されていると思われます。

これは完全に仮説ですが、元々は上り方と下り方で左右を変えていたのではないでしょうか。
しかし、中間に封じ込められる先頭車が増加し、取り外した幕を他の車両に流用したりしていく過程でぐちゃぐちゃになり、このような状態になったと考えれば違和感がありません。
真相は完全に闇の中ですが、左右がどうであるかはあまり意味がないため、途中で意識しなくなったのかもしれませんね。

おわりに

方向幕を装備する車両自体が少なくなり、幕回しという光景も過去のものとなりつつあります。
手で回していた頃は、この折り返し用のコマがありがたい存在だったのでしょうね。