1987年に登場し、1993年までに196両が製造された小田急1000形。
小田急の通勤型車両において、電磁直通ブレーキが採用された最後の形式となっており、それが結果的に引退を早める原因の一つとなってしまいました。

電気指令式ブレーキが当たり前となっている時代に、従来車との併結を考慮して電磁直通ブレーキを採用した1000形は、どれぐらい珍しい車両だったのでしょうか。

VVVFインバーター制御と電磁直通ブレーキを組み合わせた1000形

小田急で初めてオールステンレスの車体を採用し、無塗装の車体にロイヤルブルーの帯を巻いて1000形は登場しました。
それだけでもインパクトは絶大ですが、VVVFインバーター制御についても初採用となっており、その後登場する各形式の基礎となった車両ともいえます。

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8000形と比較して、近代的になったと思われる1000形ですが、アルストムリンク式の台車と電磁直通ブレーキは維持され、従来車との併結も可能となっています。
既に多くの車両が電気指令式ブレーキを採用して登場している時代に、従来車との併結を考慮しなければいけない事情があったとはいえ、あえて電磁直通ブレーキを採用して登場したのが1000形だったのです。

同時期に登場した他社の車両はどうだったのか

1990年代になっても電磁直通ブレーキを採用し続けていた1000形は、実際のところどれぐらい珍しい存在なのでしょうか。
同一形式内での機器を統一しておいたほうが良いとはいえ、分割併合がない8両や10両の編成まで電磁直通ブレーキで登場しているのです。

関東の私鉄で同時期に登場した車両では、東武と西武に電磁直通ブレーキの車両があります。
東武は200系や6050系、西武は4000系、9000系、10000系あたりでしょうか。

小田急より多いじゃないかとなりますが、実際にはそう単純ではなく、従来の車両から足回りを流用して製造された車両です。
つまり、小田急1000形とは事情が異なるといえます。
他には、京王3000系も電磁直通ブレーキでの登場ですが、増備期間が長すぎるため、これも事情が異なります。

変わり種としては、電磁直通弁式電磁直通ブレーキを採用している、相鉄新7000系という存在があります。
こちらは両数が少なく、続いて登場した形式では電気指令式ブレーキとなりました。

関東だけで調べても、オールステンレスの車体にVVVFインバーター制御を採用し、完全に新造した車両で電磁直通ブレーキを採用したのは、かなり珍しい事例といえそうです。
ちなみに、小田急では2600形の組み替え時に、IGBT素子のVVVFインバーター制御を搭載しながら、電磁直通ブレーキのままというとんでもない車両も登場しています。

おわりに

分割併合が盛んだったという事情があるものの、1990年代になっても電磁直通ブレーキの車両を大量に増備していた小田急。
ほとんどの車両が電気指令式ブレーキとなり、ホームドアの整備が進められるようになったことで、1000形の電磁直通ブレーキが厄介な存在となってしまったことは、残念な結果でもありますね。