小田急小田原線の和泉多摩川と登戸の間に架かり、東京都と神奈川県の境ともなっている多摩川橋梁。
現在使われている橋は二代目で、複々線化に合わせて架け替えられました。

列車を走らせながら架け替えを進め、さらに複々線化するという工事は、どのような手順で行われたのでしょうか。

古い橋の横に姿を現した新しい橋

多摩川橋梁の架け替えは、喜多見から和泉多摩川の区間が複々線化された後に始まりました。
一部の区間が複々線化された段階では、和泉多摩川から勾配で古い橋に繋がっており、現在とはだいぶ異なる風景でした。

その風景の変化は、新しい橋の建設から始まっていきます。
古い橋を使って列車を走らせながら、現在上り線用として使われている橋の建設が最初に進められました。
一時的ではあったものの、古い橋と新しい橋が並んでいる時期があったのです。

新しい橋が完成した段階で、まずは上り線のみが移されました。
つまり、上り線は新しい橋を、下り線は古い橋を使っていた時期があります。

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面白い点として、それぞれの橋は高さが異なっており、高架複々線化に合わせて新しい橋は高い位置にあります。
上下線で高さが違う橋を走っていたこの時期は、過渡期の面白い光景でした。

さらに面白かったのは、この時期の登戸駅構内です。
ホームは予め仮設の島式ホームとされていましたが、上り線が切り替えられたタイミングで上下線で高さが異なる状態となりました。
そこで、高さが異なるホームを階段で結び、行き来ができるようになっていました。

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新旧の橋を使って運行を継続しつつ、新しい橋に下り線を移すための工事が進められていきました。

古い橋の撤去と新しい橋の建設

上り線の切り替え後も古い橋を使っていた下り線でしたが、追って新しい橋に切り替えが行われました。
現在の上り急行線を下り線として使用し、上りホームを上下線で併用することで、新しい橋への切り替えが実現しました。

新しい橋に上下線が切り替わった後は、当然一気に工事を進めたいところですが、そう簡単ではありませんでした。
現在下り線の橋が架かっている場所には、列車が走らなくなった古い橋が残されていたからです。
まずはこの古い橋を撤去しなければいけませんでした。

この間に登戸駅の整備が先行して進められた結果、下りホームだけが先に本来の位置に切り替えられ、上り急行線から現在の下りホームに繋がっている時期がありました。
急曲線で繋がれており、この時期も面白い光景となっていました。

そして、古い橋の撤去後に新しい橋が建設され、下り線が本来の橋へと切り替えられました。
切り替え後には空いたスペースの整備が進められ、ようやく架け替えと複々線化が完了したのです。

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しかし、その時点では登戸に下り緩行線がない状態となっており、駅の手前で急行線に合流していました。
少し強引ながら緩行線用のホームができるのは、複々線化の完成からずっと後のこととなりました。

おわりに

小刻みな切り替えと仮設のホームを駆使し、まるでパズルのように進められた多摩川橋梁の架け替え。
過渡期の面白い光景を、もっと積極的に写真に残しておくべきだったと、今になって後悔しています。