小田急から東京メトロ千代田線に乗り入れができる、唯一のロマンスカーとなっている60000形。
その他にも、箱根登山線やJR東海の御殿場線にも乗り入れが可能で、その特性を示すMulti Super Express(MSE)という愛称が与えられています。

地下鉄に乗り入れるため、流線形に貫通扉を備えた前面が特徴となっていますが、登場時はこのデザインが鉄道ファンに衝撃を与えました。

2005年に発表されたロマンスカーの千代田線乗り入れ

3月に50000形(VSE)が華々しくデビューした2005年5月に、小田急と東京メトロから衝撃的な発表がありました。
それは小田急と千代田線を直通運転するロマンスカーを運転するという内容で、開始時期は2008年を予定しているというものでした。

この時期、観光シーズンを中心に両社は臨時の直通列車を多数運転しており、その集大成的な発表に感じたものです。
都心の中心部から観光地に直接行くことや、着席しての通勤が可能になるということで、ロマンスカーの歴史を変えるできごとになることは、すぐに想像ができました。

その一方で、開始時期が3年も先であることから、発表された時点ではそこまで実感がなかったのも事実です。
どんな車両が走るのか、鉄道ファンの話題は当然そこに向かっていきました。

意外なデザインで登場したMSE

地下鉄を走るロマンスカーということで、車両の前面には貫通扉を設ける必要があります。
ロマンスカーといえば流線形であることが当たり前でしたが、30000形(EXE)のような車両を予想する方が圧倒的に多かった記憶があります。

EXEの先頭車は2種類あり、中間に入る車両は前面に貫通扉を備えています。
用意されるのはこれに近いもので、名鉄2000系のような車両になるのではないかと私も思ったものです。

しかし、小田急はその予想を見事に裏切る車両を発表してきました。
車両のデザインが発表されたのは2006年9月20日で、VSEに続いて岡部憲明氏がデザインを担当することや、編成の詳細が明らかとなりました。

発表にはイメージのイラストが添えられており、注目のデザインはそれまでと同じ流線形で、多くの鉄道ファンの予想は外れたのです。
イラストでは貫通扉がそこまではっきりとは描かれていなかったものの、流線形に貫通扉を設けてきたことに衝撃を受けました。

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こうして前面に貫通扉を備えたロマンスカーが登場し、その後の主力形式となっていきました。
現在は30000形に次ぐ勢力にまで発展し、全ての列車に充当が可能なマルチなロマンスカーとして、文字どおりの活躍を続けています。

おわりに

気軽に乗れるロマンスカーを定着させたともいえるMSE。
予想外のデザインで登場した車両は、地下鉄に乗り入れるという役割以上の活躍をしていくこととなりました。