小田急小田原線の渋沢から新松田の間にある連絡線を通り、JR東海の御殿場線に乗り入れているふじさん号。
現在は60000形(MSE)がその役目を担っており、連絡線をゆっくりと通過して御殿場線と行き来しています。

ゆっくりと通過する光景が印象的ですが、なぜこんなにも低速で連絡線を走っているのでしょうか。

連絡線を通って御殿場線に入線するふじさん号

ふじさん号の歴史は、1955年に小田急の気動車が乗り入れるようになったことで始まりました。
当時の御殿場線は非電化の路線で、この乗り入れのために小田急はわざわざ気動車を製造したのです。
愛称は列車ごとに異なっており、その中の一つが朝霧号でした。



その後御殿場線が電化されると、1968年からは3000形(SE)が乗り入れるようになり、愛称はあさぎり号に統一されます。
1991年からは相互直通運転へと発展し、小田急が20000形(RSE)を、JR東海が371系を導入しました。
しかし、2012年には再び小田急からの乗り入れのみとなり、車両は60000形(MSE)へと変更され、インバウンドを意識してか、2018年に愛称はふじさん号に変更されました。

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様々な変化をしつつ現在まで続くふじさん号が、変わらずに通り続けるのが、新松田駅の近くにある連絡線です。
小田急と御殿場線を結んでいるこの連絡線を通り、ふじさん号は行き来しています。
新車の搬入時にも使われるこの連絡線ですが、通過する際にはかなり低速での走行となっており、制限が多いことが印象的です。

なぜ低速で連絡線を通過するのか

ふじさん号が通過する連絡線は、それほど長い距離ではないものの、車両が低速で通過していきます。
見方を変えれば、できるだけ短い距離で若干の無理をして繋げたともいえそうです。

御殿場線は新松田の新宿方で小田急の上を通っており、高低差があります。
短い距離でその高低差を結ぶということは、必然的に急勾配と急曲線になることを意味しているのです。

低速での走行となる理由は他にもあります。
小田急線内から連絡線に入る手前で、ふじさん号は既にスピードを落としている状態となりますが、これは分岐部分が逆カントになっているためです。
連絡線はカーブの途中から外側に向かって分岐しており、車体を内側に傾けた状態から外側に転線していくため、最徐行での通過をする必要があります。

さらに、連絡線の途中には、デッドセクションという架線に電気が流れていない区間が存在します。
この区間では車両を加速させることができないため、運転の難易度はさらに上がるのです。

低速での通過が必要で、かつ思うように加速もできないこの連絡線を通り、毎日ふじさん号は運転されています。

おわりに

以前より目立たない列車にはなったものの、苦労が多い連絡線を通ってふじさん号は運転されています。
ふじさん号に乗らないと通過することができない連絡線ですから、それを楽しみに乗ってみるのも良いかもしれませんね。