現代を走る鉄道車両の多くには、スカートという部品が先頭部に取り付けられています。
小田急はスカートの設置を早い時期から開始しており、時代が平成に入った頃には全ての車両に取り付けられている状態でした。

今回の記事では、小田急の車両に装備されたスカートが、どのような歴史を辿ってきたのかを紹介したいと思います。

スカートが装備されている理由

現在は装備されていることが当たり前となったスカート(台枠下部覆い)は、障害物から車両を守るための部品です。
自動車や動物を巻き込むことを防ぎ、車両の走行に必要な部分が極力損傷しないように設けられています。

材質は鋼鉄等の頑丈なもので、車両によって形状は様々ですが、近年は大型化する傾向となっており、強度のアップが図られています。
最近はデザインも重視されており、形状や色合いに工夫がされていたり、車体と一体化したようなものも多くなりました。

一昔前は、装備されていない車両が圧倒的に多数派でしたが、時代が平成になる頃から各社での設置が活発化し、現在は路線の特性で装備するメリットがない場合を除き、ほぼ全ての車両が新造時から装備するようになりました。

小田急の車両とスカート

小田急の車両におけるスカートの歴史は、1972年に登場した9000形から始まりました。
斬新な前面デザインが印象的な車両ですが、スカートを初めて装備した車両でもあったのです。

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小田急はスカートが気に入ったのか、同年中に従来車への追加設置も開始しました。
2600形が2665Fを皮切りに装備を開始したほか、2400形のクハ2551にも試験的に設置されました。
しかし、理由は定かではないものの、中型車への設置は行わない方針となり、クハ2551のスカートは1977年に撤去されました。

スカートを装備しないで登場した2600形、4000形、5000形の5062Fまでの各編成に対しては、順次スカートの設置が進められていきました。
昭和の終わり頃には大型車の全ての編成に設置が完了しており、小田急といえばスカートがあるというイメージが定着したのです。

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細部の形状は異なるものの、スカートの基本的な形状は共通となっており、小田急の車両には統一感がありました。
大きくは変わらない形状は2000形まで続き、一時期は全ての車両が同じような形状のスカートを装備している状態でした。

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その状況を変化させることになったのは、その後小田急で最多の車両数を誇ることとなる3000形でした。
直線的な車両のデザインに合わせて、スカートの形状も平面的なものとなりました。
しかし、従来の形状の面影があったため、この段階ではそこまで違和感を感じませんでした。

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そして、小田急の車両におけるスカートの転換点となったのが、3000形の3263Fです。
側面に防音カバーを設置したことに合わせてスカートの形状が見直され、それまでの流れが断ち切られました。
車体のデザインとの一体感はあまり重視されなかったようで、あくまでも部品としての機能性が重視されたことが特徴といえそうです。

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その後登場した4000形や5000形では、車体に合わせた形状のスカートが装備されるようになり、全体のデザインに安定感があります。
昔とデザインは変わってしまったものの、3000形で生じた違和感はなくなりました。
そして、車両に合わせて形状を変えつつも、小田急とスカートの関係は今も続いています。

おわりに

まだ他社ではスカートが珍しかった頃、小田急の車両はインパクトがありました。
スカートが前面の下部を引き締めていたことで、力強さを感じたことがその理由なのかもしれません。