営団地下鉄(現在の東京メトロ)千代田線に乗り入れるための車両として、1987年に登場した小田急1000形。
最盛期には196両が在籍し、小田急で最多両数の形式だった時期もありました。

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小田急では、現在までに3世代の千代田線直通用形式が登場していますが、1000形は他の2形式と大きく異なる形式です。
今回の記事では、歴代の千代田線直通用形式を簡単に振り返りつつ、1000形の何が他の形式と異なっていたのかを紹介したいと思います。

歴代の千代田線直通用形式

1978年から開始された千代田線との相互直通運転では、現在までに小田急からは3形式が乗り入れてきました。
まずはそれらの3形式を簡単に振り返ってみることとしましょう。

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千代田線直通用の車両として最初に登場したのは、現在も多くのファンがいる9000形でした。
それまでの車両とは全く異なる前面デザインを採用し、千代田線に乗り入れた車両としては、唯一ケイプアイボリーの車体にロイヤルブルーの帯を巻いた車両です。
後継車の1000形に役目を譲った後は、地上専用車として長く活躍しました。

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9000形の後継車として、オールステンレスの車体を採用して登場したのが、今回の記事の主役である1000形です。
増備の途中では、小田急の車両としては初となる10両固定編成が登場し、長編成時代のスタートを切った車両でもあります。
4000形が登場したことで徐々に直通運用からは撤退し、9000形と同様に地上専用車となりました。

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現在も千代田線に乗り入れているのが、3世代目として登場した4000形です。
JR東日本のE233系をベースとしている車両で、小田急の中では異質な存在となっています。
乗り入れ先の事情に合わせた改造が繰り返し行われており、当面は直通用車両としての役目を担い続けるものと思われます。

1000形の何が他の2形式と異なっていたのか

現在までに3形式が登場した千代田線直通用の形式ですが、1000形だけは他の形式と明確に異なる点がありました。
9000形と4000形は、小田急線内でも使用できる汎用性を持たせつつも、千代田線乗り入れ専用形式であったのに対して、1000形は車両自体が汎用形式なのです。

どういうことかというと、9000形や4000形は千代田線に乗り入れる運用を中心として、小田急線内でも運用できるようになっています。
基本的には全編成が乗り入れに対応しており、小田急線内だけの運用にも充当されるものの、千代田線直通用としての役割が大前提にあります。

しかし、1000形はこの前提が異なっているのです。
千代田線に乗り入れる車両として求められる性能や、車体の幅が若干狭いといった地上専用車とは異なる部分が、1000形にも当然あります。
その一方で、ワイドドア車といった特殊な編成が存在することや、千代田線に乗り入れることができない編成もありました。

1000形については、地上専用車と乗り入れ用の車両を1形式でまとめた側面があり、直通用機器の有無で役目が異なっていました。
この考え方は、9000形や4000形とは明確に異なるといえますが、4000形が再び専用形式としての色を濃くしたことを考えると、用途を分けたほうが良いという判断になったのでしょうね。

おわりに

特殊な装備が多く、結果的に扱いにくい車両となってしまった9000形の反省が、1000形という車両を生んだのかもしれません。
しかし、それによって1000形は必要以上にバリエーションが多い車両となってしまい、一部の編成が早期に廃車となる運命を背負うこととなりました。