複々線化されたことによって、現在は地下の駅となった小田急の世田谷代田。
地上に駅があった頃は、昔ながらの長いベンチが残っているといった特徴があり、エピソードが豊富な駅でもあります。

そんな世田谷代田という駅には、比較的近年のことではあるものの、短期間だけ使用された幻のホームがありました。

エピソードが豊富な世田谷代田駅

世田谷代田は、小田急小田原線が開業した1927年に設置された歴史が長い駅です。
当時の駅名は世田ヶ谷中原で、1946年に現在の駅名に改称されました。

比較的小規模な駅ながらエピソードが豊富であり、小田急の駅としては唯一戦時中に空襲で被災するといった、悲しい歴史もあります。
そして、戦時中から戦後にかけては、一時的に現在の京王井の頭線と線路が繋がっていました。

複々線化の工事が始まる前は、昔ながらの雰囲気が残っていることが特徴の一つで、木製の長いベンチが設置されていました。
上下線のホームは跨線橋で結ばれており、一昔前の私鉄の標準的なスタイルの駅だったといえます。

そんなノスタルジーに浸れる世田谷代田でしたが、複々線化の工事が始まると状況は一変します。
あっという間に駅は仮設の状態に変化し、昔ながらの雰囲気は過去のものとなったのです。

世田谷代田駅に存在した幻のホーム

仮設のホームや駅舎に切り替え、世田谷代田の工事は進められました。
そして、下北沢地区は2013年3月23日に地下化されることとなり、世田谷代田も地下の駅に切り替えられたのです。

しかし、このタイミングで開通したのは現在の急行線でした。
世田谷代田に優等列車は停車しないため、当然急行線にホームはありません。
緩行線が開通するまで全列車を通過させるわけにもいきませんから、どのようにして対応していたのでしょうか。

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それが5年間だけ存在した幻のホームで、地下の急行線に仮設のホームを設置して、緩行線が開通するまでの期間を乗り切ったのです。
ホームを設置するためにトンネルの幅が広くなっており、上の階と繋ぐ階段も設置されていました。

緩行線の工事が進められている間に使われた仮設のホームは、2018年3月3日に緩行線が開通したことで役目を終えました。
現在のホームに切り替えられた後は急行線に入ることはできず、その後仮設のホームも撤去されています。
優等列車に乗って急行線を走っていると、トンネルが広くなっている場所があり、そこにかつてホームがあったことを現在に伝えています。

おわりに

早いもので、幻のホームに入れなくなってから3年以上が経ってしまいました。
まだ覚えている方が多いと思いますが、こういったエピソードもあっという間に風化してしまうのでしょうね。