車窓からの眺望が良く、1980年代以降鉄道各社で登場したハイデッカーの車両。
小田急でも10000形(HiSE)と20000形(RSE)で採用されましたが、バリアフリー化が困難だったことが災いし、早期の引退へと追い込まれてしまいました。

ハイデッカーの車両で小田急は苦い経験をすることとなってしまいましたが、今後再登場をする可能性はあるのでしょうか。

2形式が登場したハイデッカーのロマンスカー

ハイデッカーとは、客室の床を通常より高い位置としたもので、鉄道車両以外ではバスでも見ることができます。
床が高くなっていることで、車窓からの眺めが良くなることが特徴で、景色を楽しめることがメリットになる、観光用の車両を中心に採用されました。

各社でハイデッカーの車両が多数登場していた時期、小田急にもハイデッカーのロマンスカーが登場しました。
それが10000形と20000形の2形式で、高い位置にある側窓が印象的な車両となっていました。

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10000形は1987年に登場した車両で、7000形をハイデッカーに変更したような仕様となっており、カラーリングも一新されました。
前面展望席の部分は通常の高さとなっており、それ以外がハイデッカーとされています。
ロマンスカーの特徴である前面展望席以外も眺望が良く、乗っていて楽しい車両に仕上がっていました。

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続いて登場した20000形は、JR東海の御殿場線に乗り入れるための車両で、編成内にダブルデッカー車も組み込んだ豪華な車両でした。
前面展望席は採用されていないものの、客席が高い位置にあるのに対して、運転席は通常の高さにあるため、運転席を見下ろしながら前面展望が楽しめる車両でした。
運転席を挟んでの前面展望でしたが、他のロマンスカーにはない違った魅力があったといえます。

登場当時はほとんど問題になりませんでしたが、世の中のバリアフリー化が進むと、車内の段差が徐々に問題視されるようになりました。
2000年に交通バリアフリー法が制定されたことも関係し、どちらの形式も更新を行わずに廃車となり、2012年に揃って小田急から引退しています。
自慢のハイデッカーが災いするという、皮肉な結果となってしまいました。

小田急でハイデッカーの車両が再登場する可能性

バリアフリー化の問題で、ハイデッカーの車両を早期に引退させざるを得なくなった小田急において、再び同様の車両を登場させる可能性は相当低いといえます。
私自身の願望に近いかもしれませんが、再登場の可能性を考えてみたいと思います。

まず、ハイデッカー自体がバリアフリー化の妨げになるというよりは、採用することによって生じる段差に問題があります。
10000形や20000形は客席のほとんどがハイデッカーとなっていたため、側扉の部分に階段が設けられていました。
これが最大の問題点でしたが、これを避けることができれば、ハイデッカーを再び採用できるともいえます。

近年はハイデッカーの車両が登場すること自体が珍しくなりましたが、積極的に採用している鉄道会社もあります。
それが近鉄であり、50000系や80000系にハイデッカーを採用しているのです。
バリアフリー化の問題は、先頭車のみをハイデッカーとすることで回避しており、これが諸問題を解決する最適解なのかもしれません。

小田急が同様の構造を採用した場合、近鉄の真似だと言われてしまいそうですが、それでも20000形のような運転席が見える前面展望席を期待してしまいます。
色々な車両があったほうが乗る分には面白く、いつも驚きを与えてくれるロマンスカーですから、50000形(VSE)や70000形(GSE)とは一味違った前面展望席の車両が登場すれば、インパクトもあるのではないでしょうか。

おわりに

小田急のロマンスカーにおいては、不幸な歴史となってしまったハイデッカー。
現代版のハイデッカーを採用することで、再びあの眺望を楽しめるような日が訪れることを、1人の小田急ファンとして願っています。