一部の車両が廃車になりつつも、まだ多くが元気に活躍している小田急8000形。
現在の関東地方では比較的珍しい普通鋼製の車体で、昔ながらのカラーリングに安心感を覚える方も多いかもしれません。

8000形には4両と6両の編成が在籍していますが、実質的には10両固定編成のように扱われています。
4両編成が単独で使われる機会はなく、リニューアルの際に10両化してしまっても良かったように思われますが、なぜ4両編成はそのまま残されたのでしょうか。

2007年度から開始された4両編成のリニューアル

2002年度から開始された8000形のリニューアルは、まず6両の編成に連続して行われました。
14編成が済んだところでようやく4両編成のリニューアルが始まり、更新車で揃えられた10両編成が走るようになりました。

20190202_01

最初の2編成が界磁チョッパ制御のままであったり、6両ばかりにリニューアルが行われるという不思議な展開が印象的ですが、後者については当時小田急が抱えていた事情がありました。
一日を通して10両のまま走る運用が増える2008年まで、4両のリニューアルを控えていたと考えられるからです。



こうして8000形の更新車は、実質的に10両固定編成として使われることになるものの、中間に先頭車が必ず入ることとなってしまいました。
4両の小田原方が先頭車として使われる機会は試運転ぐらいしかなく、現在までもったいない状況が続いています。

8000形の4両編成は何のために残されたのか

4両単独で営業運転をする機会がない8000形は、結果としてもったいない先頭車が存在することになってしまいました。
10両を組む際の位置関係も固定されているため、4両の小田原方と6両の新宿方先頭車は、ほとんど先頭に立つ機会がありません。
6両については単独で営業運転を行うことがありますが、4両にはその機会すら与えられていません。

8000形の先頭車を中間車化し、10両化するという噂が一時期あったものの、結果としてそのようなことは行われませんでした。
噂の真偽は不明ですが、されていたら今頃どうなっていたのでしょうか。
仮に10両化が行われていたら、界磁チョッパ制御の編成も足回りを改造することになったのかもしれません。

8000形の4両がそのまま残された理由として考えられるのは、10両化をするデメリットが多いこと、既に方針を転換することが困難な時期だったこと、4両として使う可能性を考慮していたこと、この3点だと考えています。

デメリットとしては、以下のような理由が考えられます。

・界磁チョッパ制御の編成を再改造する必要が生じる
・小田急全体として6両の編成が少なくなってしまう
・改造中は10両もの車両が運用を離脱してしまう
・リニューアルの時期によって編成ごとの仕様が異なる

6両の編成を先に14編成も更新してしまったことから、その時点で方針変更をしても無駄が多く、再改造をすることは難しかったといえそうです。
4両と6両が存在することも分割併合が原因ですから、その問題が解決しない限り、10両化は難しかったという現実もあります。

デメリットが多い中、将来的に4両単独で使う可能性がないとまではいえない状況では、あえて10両化をせずに残すことが最善だったといえそうです。
結果的には、今日まで8000形の4両が単独で営業運転を行うことはなく、4両の小田原方先頭車は無駄な存在となってしまいました。
しかし、簡易的に先頭車としての機能を撤去した車両が、小田急の過去には多く存在しており、8000形がそれを行っていないということは、現在も4両で使う可能性を否定してはいないということだともいえそうです。

おわりに

こんなにも長期間に渡って使われることがない先頭車は、小田急の歴史上でもトップクラスだといえます。
いつ頃まで8000形が使われるかは不明ですが、今後もったいない先頭車が活用される機会は訪れるのでしょうか。