老朽化しつつある従来の車両を置き換えるため、2019年に登場した小田急5000形。
通勤型としては2000形以来となる拡幅車体を採用し、ゆとりを感じる車内が印象的な車両です。

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3000形の登場によって、設計方針が大きく変わったといえる小田急の車両は、5000形でまた少し方向性が変化したといえそうです。

車両の性能を向上させた3000形

小田急の車両について語るうえで、避けることができない車両といえば、現在も主力として活躍する3000形です。
最も在籍する両数が多く、小田急線内のどこでも見ることができる形式ですが、それまでの車両とは大きくイメージが変化したことで、登場時は様々な意見がありました。

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3000形の特徴を簡単にまとめると、外見よりも性能の向上に力を入れた車両ということができます。
それまでの車両とは明らかに力を入れているポイントが異なることが、3000形という車両を生んだといえそうです。

外見についてはあえて語らなくても分かりますが、拡幅車体の採用が見送られ、全体的に角ばったデザインが採用されました。
雨樋の位置が下がったこともあり、それまでの車両とは全く異なる印象に仕上がっており、その現実をなかなか受け入れられない小田急ファンも多かったと思います。
この外見となった理由には、日車式ブロック工法を採用した影響もあると思われますが、変化のインパクトは相当なものでした。
車内については、座席の硬さ等を気にする方が多く、これらも従来の車両とは大きく異なる部分だったといえます。

一方で、車両としての性能は格段に向上しており、地下鉄に乗り入れない車両としてはそれまでになかった性能となりました。
特に高加減速性能が良くなっており、単独で走行する3000形に初めて乗車した際には、その性能に驚かされました。
外見についてはある程度妥協し、性能の向上に力を入れるようになったのが、3000形という存在でした。

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続いて登場した4000形も、基本的には同様の流れだったといえますが、将来的にJR東日本の常磐緩行線に乗り入れることを想定していたのか、E233系をベースとしました。
外見については、3000形よりも少し力が入ったようにも感じましたが、実用面を重視したと思われる点は変わりませんでした。

現実的に可能な範囲で考え抜かれた5000形

東京メトロ千代田線への直通運転用として登場した4000形を分けて考えると、3000形の実質的な後継形式は5000形であるといえます。
近年では当たり前となった標準車両の要素はあるものの、現実的に可能な範囲で熟慮が重ねられたのだと、5000形からは感じられます。

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帯の配色が変わったことや、前面のデザインには好みがあるとは思うものの、標準車両として可能な範囲で考え抜かれているように感じています。
それまでの車両とは異なり、車体全体に光沢があるようになりましたが、これは扉周辺の光沢が目立つ状態を和らげるためなのかもしれません。

車内についても改善がみられ、座席の座り心地がかなり良くなっているほか、車内が広く明るく見える工夫が施されているのが分かります。
近年の車両としてはかなり居住性が改善されており、乗ると嬉しくなる車両に仕上がっています。

5000形は性能の面でも力が入れられており、3000形や4000形と同等か、それ以上の性能を誇ります。
性能面を中心に力を入れていた3000形に対して、デザインや居住性といった面も含めて、トータルで力が入っているのが5000形の特徴といえそうです。
昔と同じとまではいえないものの、小田急らしさが追及されていると感じられることが、5000形の人気が高い理由なのかもしれません。

おわりに

5000形の登場によって、また少し変化しつつある小田急の通勤型車両。
今後の車両はどのようになっていくのか、リニューアルの面も含めて色々と期待してしまいます。