一世代前の鉄道車両では当たり前だった、種別や行先を表示するための方向幕。
グルグル回るのが面白い方向幕は、車両の置き換えやリニューアルによって徐々に数を減らし、現在の小田急では1000形の未更新車で僅かに残るのみとなりました。

現在は大型のLED表示器が主流となった小田急ですが、昔の車両は表示部が小さい形式も多く、長い駅名は省略されているケースもありました。

小田急の車両と方向幕

小田急の車両で初めて方向幕を装備したのは、1957年に登場した2220形でした。
先頭車の貫通扉部分に手回し式の方向幕が設置されており、車体から飛び出していることが特徴でもありました。
種別幕については、1964年に登場した2600形で本格的に採用され、前面には種別と行先を表示する方向幕が装備されることが標準となります。

側面に方向幕を装備したのは9000形の2次車からで、種別のみを表示するものが採用されました。
それ以前にもランプ切換式のものは採用されていましたが、方向幕は9000形の2次車が最初ということになります。
側面に種別と行先を表示するようになったのは、5000形の6両の3次車からで、同様のタイプに改造された車両も多く、最終的には主流となりました。

ロマンスカーについては、7000形(LSE)で前面に愛称を表示するものが初採用されています。
前面が流線形だったことから技術的に難しい部分があり、通勤型車両よりかなり遅れての採用となりました。

一時期は所属する全車両が方向幕を装備しているような時代もありましたが、1990年代にはLED表示器が採用されるようになりました。
2000年代からは車両の置き換えやリニューアルで数を減らし始め、現在は1000形の未更新車に僅かに残るのみとなっています。

駅名が省略された方向幕のコマ

小田急には駅名が長い駅が少ないため、方向幕に表示される駅名を省略しているケースはほとんどありません。
しかし、一部には省略しているコマがありましたので、今回はそれらをご紹介します。

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まずは頻繁に見ることができた江ノ島行きのコマです。
本来の駅名は片瀬江ノ島ですが、「瀬」の字が細かいことを避けたかったのか、「片瀬」が省略されたものとなっていました。

成城学園前のように5文字のコマ自体はあるため、文字数だけではない理由で省略されていたのでしょう。
英字を併記するようになってからは、駅名を省略せずに表示するようになりました。

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もう一つのコマは、多摩線の延伸後は使われることがなくなった多摩センター行きのコマです。
本来の駅名は小田急多摩センターと長いため、「小田急」の部分が省略されています。

このコマは現在も多摩センターのままとなっており、唯一駅名が省略されている状態です。
しかし、LED表示器では省略しないで表示するようになっているようで、方向幕の消滅と同時に省略された表示は過去のものとなりそうです。

おわりに

小田急では多くない駅名が省略された方向幕のコマですが、どちらの駅も省略によって駅名が分かりにくくならないことがポイントといえます。
省略しても支障がない範囲としていることが、小田急のこだわりなのかもしれませんね。