走行中の車内において、乗客が切りつけられたり、放火がされるといった事件が多発しています。
小田急では、2021年8月6日に快速急行の車内において、多数の乗客が怪我をするという痛ましい事件があり、その後京王等でも模倣した事件が続きました。

このような事件が続く中、小田急では耐刃手袋と盾の配備をすることが発表されていますが、これ以外にも中間に先頭車が入ってしまうことで、中間を通り抜けることができない編成が存在するといった課題も見えてきました。
昔よりは少なくなったものの、このようなケースは今後どうなるのでしょうか。

現在も小田急を走る分割10両編成

輸送力の増強に伴って編成の両数を増やしてきた小田急では、現在も中間に先頭車が入る組成の編成が残っています。
これらのケースは8両と10両で見ることができますが、4両を2編成繋いだ8両は既に代走時だけとなっており、基本的には10両でのみ定常的に見られるものとなりました。

10両についても、5000形が10両固定編成で増備されていることで数を減らしており、1000形では既に分割10両を見ることができなくなっています。
通勤型車両で現在も見られる分割10両は、8000形同士、8000形と3000形、1000形と3000形のパターンのみとなっており、バリエーションとしてはかなり少なくなりました。
特急型車両においては、30000形と60000形で分割10両の組成があり、途中駅での分割併合も行われています。

このように分割10両自体はまだ残っていますが、昔は全ての10両がそうだった時代もあったことを考えると、かなり少なくはなったといえそうです。
まとまった数が見られるのは8000形同士のパターンで、多くの編成が現在も分割10両で走っています。

分割10両が抱える中間の通り抜けができない問題

切り離して短い編成でも使うことができる分割10両ですが、収容力が貫通編成に比べて劣るという問題があり、小田急では平成に入った頃から中間に先頭車が入らない固定編成化を地道に進めてきました。
東京メトロの千代田線に乗り入れる車両については、韓国で放火事件が発生したことを受けて、地下鉄線内に分割編成を入線させることを避けるため、早い段階で固定編成化が進められています。



少し前から車内の通り抜けができないことの問題は認識されており、少しずつ解消に向けての対応が進められていたといえます。
地下鉄線内を走る分割10両については、非常時に通り抜けができるような構造にはなっていましたが、通常時は通ることができないため、4000形に全編成を交代させるという対応になりました。
特急型車両については、編成間を幌で繋いでいることから、大きな問題は現状でもないといえそうです。

小田急線内を走る分割10両の通勤型車両についても、車両の前面に貫通扉を設けることで、非常時には乗務員の扱いによって通り抜けることが可能とされてきました。
しかし、3000形については前面が非貫通となっており、10両となった場合には編成間での通り抜けをすることができません。

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いずれのケースにおいても、ある程度時間的な猶予があれば大きな問題はないといえますが、緊急性を要する今回のような事件においては、通り抜けができないこの構造は厄介といえそうです。
1000形の未更新車に続いて8000形の淘汰が進められる場合には、なお一層の10両固定編成化が進められることにはなるものの、中間に先頭車が入る組成をなくすことはできません。

しかし、今までの流れを考慮した場合、どのぐらいの時期となるかは見通せないものの、最終的に小田急は通勤型車両の中間に先頭車が入る組成をやめる方向だと考えられます。
8000形が小田急線上から姿を消すと、残る4両編成は1000形の7編成のみとなるのでしょうから、運用の見直し等によって全てを単独編成で運用することも可能となりそうです。
8両についても、現状では10両で代走が可能な状況ですから、そのうち4両を2編成繋いだパターンは見られなくなってしまうかもしれませんね。

おわりに

年々数を減らし、見る機会も減りつつある中間に先頭車が入った組成。
様々なデメリットもあることから、最終的には完全に消滅してしまう可能性が高そうです。